なぜ第2のスイフトスポーツは現れないのか!? コスパ最強スポーツカーの秘訣

スイフトスポーツは「価格」でもライバルを圧倒

写真は2018年9月に追加されたノート「e-POWER NISMO S」。より強化されたモーター(136ps/32.6kgm)を搭載し、価格は267万1920円。1.6Lエンジン(140ps/16.6kgm)の「NISMO S」は232万8480円。

価格も違う。ヴィッツ「GR」や「GRスポーツ」、ノート「NISMO」などは200万円を上まわり、スイフトスポーツに比べると総じて割高で魅力に欠ける。

その代わりに「チューニングカーらしさ」は、ヴィッツ「GR」、ノート&マーチ「NISMO」が濃厚で個性も強いが、一般的な選択ではない。従って多くのユーザーが買うのはスイフトスポーツになる。

唯一スイフトに近い車種がマツダ デミオだろう。後席と荷室は狭いが、前席の快適性と走りに力を入れた。スイフトスポーツのような高性能仕様は設定されないが、走りの素性は良く、1.5Lのクリーンディーゼルターボで独特の世界を築いている。

そしてデミオには「15MB」と呼ばれる1.5L直噴ガソリンエンジンを搭載したモータースポーツのベース車両があるから、その気になればスイフトスポーツのような仕様も開発できるだろう。

以上のように、高性能仕様で重要なのは、ベース車の優れた素性だ。1975年に発売された初代フォルクスワーゲン(VW) ゴルフGTIが成功したのも、GTIの開発以前に、ベース車が熟成されていたからだ。そして国産コンパクトカーは、概して実用性は高いが走り(の実力)は低いから、スポーツモデルも成立しにくい。スイフトとスイフトスポーツは、例外的に欧州車的な商品特性を備えるから、人気を高めた。

国産コンパクトカーは、実用性と割安感を重視してコストダウンに走りがちだが、そろそろ商品力にも目を向けたい。そうすれば売れ行きが安定的に伸びて、フルモデルチェンジの周期も長くできる(安全性と環境への対応を考えると限度はあるが)。優れたスポーツモデルが成立する商品開発は、ユーザーに大きなメリットをもたらす。

何が足りない!? 競合するライバル車の評価は?

デミオ 15MBは1.5Lエンジン(116ps/15.1kgm)を搭載。出力とトルクは若干高められているものの、基本は他グレードと同型のエンジンで価格は156万円

■ホンダ フィット RS

現行フィットが発売された時、開発者は「VW ポロ(先代型)をベンチマークにした」とコメントした。指標を設けるならゴルフにすべきだ。ポロでは操舵に対する正確性、走行安定性、乗り心地がいまひとつに終わってしまう。「RS」もその印象から抜け出せない。

ただし、フィットの居住性、積載性、空間効率はポロを含めた欧州製コンパクトカーよりも優秀だ。仮に次期型で走行性能と乗り心地を底上げできれば、次期フィット「RS」は、ポロGTIやスイフトスポーツを総合的に上まわる車になり得る。

■日産 マーチ&ノート NISMO

マーチやノートは、プラットフォームを含めて、コスト低減を重視して開発された。ノート e-POWERの登場で印象が少し変わったが、本質的な変化はない。従って次期型に期待したい。

ノートは居住性が優れているので、走りと質を高めれば、かつてのティーダを発展させたような「コンパクトな高級モデル」になり得る。これをベースにスポーツモデルを開発すれば、良い車になるだろう。

■トヨタ ヴィッツ GRスポーツ“GR”

マーチ&ノート NISMOに似て、ベース車の素性がいま一歩だ。これもプラットフォームから刷新させる次期型に期待したい。

■マツダ デミオ 15MB

走りの素性はスイフトと同様に優れている。モータースポーツのベース車となる「15MB」を活用すれば、クリーンディーゼルターボとは違うスイフトスポーツ的な走りの楽しい仕様を開発できる。

■スバル インプレッサ

走りの素性が高いのに、力の入ったスポーティグレードが用意されないのは残念だ。インプレッサには、1.6Lターボエンジンを搭載した「STIスポーツ」を加えて欲しい。

ヴィッツ GRスポーツ“GR”はベース車と同様の1.5L直4エンジン(109ps/14.1kgm)を搭載し、足回りなどを差別化。価格は5MT、CVTともに229万2840円

インプレッサスポーツ(写真はSTIのパーツ装着のデモカー)は、基本性能が高いだけに魅力的なスポーツモデルを作る“素質”は充分だ

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