マツダが新年早々に発表したNEWモデルのMX-30 eスカイアクティブ R-EV。この新車はエンジンで発電してバッテリーやモーターに供給し、その動力で走るパラレルハイブリッドカーだが、注目したいのは発電に使われるエンジンがロータリーだということ。
ロータリーエンジンと言えばマツダのお家芸。しかし、さまざまな理由により2012年のRX-8を最後にマツダのラインナップからは姿を消している。そんなロータリーがここにきて意外なかたちで復活する。そこで今回は、ロータリーエンジンのメリット&デメリットを見つつ、今後の動力用エンジンとしての復活はあるのかを考察していきたい。
文/長谷川 敦、写真/マツダ、Audi
そもそもなぜロータリーはなくなっていたのか?
発電用とはいえ、ついにマツダにロータリーエンジン搭載車が復活する。だが、どうして人気のあったロータリーエンジンはシリーズを終了していたのだろうか? その大きな要因のひとつが燃費だ。
ロータリーエンジンは、構造上一般的なレシプロエンジンに比べて圧縮比が低くなる。これは燃焼室の体積が大きいのが理由で、熱エネルギー効率が下がるため低速トルクもレシプロエンジンより低めになる。これらを補うために、どうしても多くの燃料を必要とするのだ。
エコが重視される現代において燃費面での難点が販売戦略上不利になるのはいかんともしがたく、しかもそれが構造上の問題となると一朝一夕での解決も難しい。そうしてロータリーエンジン搭載車は惜しまれつつも販売が終了した。
ロータリーエンジンのメリットと愛された理由
先にデメリットを紹介したが、マツダが数多くの困難を乗り越えてロータリーエンジン実用化を達成したのにはもちろん理由がある。
ロータリーエンジンは1950年代にドイツ人技術者のフェリクス・ヴァンケルが完成させ、1957年にはドイツの自動車メーカー・NSUによって試作品が誕生している。このためロータリーエンジンのことをヴァンケルエンジンと呼ぶ場合もある。
1964年にはNSUからロータリーエンジン搭載の市販モデルも登場したが、多くの問題を抱えたままのリリースであった。この直前に、独自技術の確立を目指していた東洋工業(現マツダ)は、NSUとの技術提携を締結してロータリーエンジンの開発に着手。数え切れないほどの試行錯誤の末に、ついに実用と量産に耐えるロータリーエンジンを完成させた。
ロータリーエンジンのメリットは、エンジン全体をコンパクトにできること、それによる軽量化が可能なこと、そして振動の少なさや排気量あたりのパワーが大きいことなどが挙げられる。これらの利点は特にスポーツ志向の強いモデルにうってつけであり、マツダ初の量産型ロータリーエンジン搭載車もスポーツカーのコスモスポーツだった。
以降ロータリーエンジンは数多くのマツダ製モデルに搭載され、特にRX-7シリーズなどのスポーツカーで高い評価を得た。振動の少なさは抜群のスロットルフィールを生み出し、パワフルかつ軽量なエンジンはスポーツカーの走りを高いレベルに引き上げた。ロータリーエンジン独特の高回転域でのカン高い排気音もファンから熱い支持を受けている。
実際、動力用ロータリーエンジン搭載車の生産終了から10年以上が経過した現在でもロータリーエンジンモデルの人気は高く、中古車市場でも高値で取り引きされている。だからといって、EVを筆頭とするエコカーの開発をはじめ、マツダには優先してやるべきことも多く、ロータリーエンジン搭載車の復活は当面はないと思われていた。
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