「障害物もない見通しのよい交差点でクルマどうしが衝突」。ときどきこんなニュースが報じられる。「見通しがよすぎててわき見でもしてたんだろ」と思うなかれ。そこには人間の錯覚から生じる危険が潜んでいるのだ。不幸な事故に出会わないために「コリジョンコース現象」の原理を知っておくべし!
文:ベストカーWeb編集部、写真/JAF、Adobestock
■角度が変わらないクルマは止まって見える!
見通しのいい交差点で起きる衝突事故。ドライバーのわき見などが原因と決めてかかってしまいがちだが、そうとはいえないときもある。「しっかり前を見ていたのにクルマが見えなかった」「クルマが止まっているように見えた」といった事態が起こり得るのだ。
こうした現象を「コリジョン(衝突)コース現象」と呼ぶ。田畑が広がる場所や北海道の十勝地方で多発したことから、「田園型事故」とか「十勝型事故」と呼ばれることもある。
具体的にはこんなケースを指す。見通しのいい道を一定速度で走っていて、前方にある交差点に右か左からクルマが近づいている。この時、交差点からの距離や走っている速度が両車とも似ているとき(このまま走れば衝突するコースにあるとき=これを「コリジョンコースに乗る」という)、人間の目は互いのクルマに注意を払いにくくなってしまうのだ。
なぜか。この状況で走っているとき、互いのクルマはずっと斜め前45度に見え続ける。見えている角度が変わらないから、人間はクルマが止まっているものと誤認してしまうのだ。人間の視野には「中心視野」と「周辺視野」があるが、色や動きをはっきり認識できる中心視野に対し、周辺視野はそれらをぼんやりとしか認識できない。コリジョンコースにあるクルマはその周辺視野に映りがちなので、存在に気付きにくいということも要因のようだ。
見える角度が変わらないことは別の事態も引き起こす。近づいてくるクルマがちょうどAピラーに隠れ続けてしまい、存在に気付かないというケース。これも一種のコリジョンコース現象ということができるから注意したい。
コリジョンコース現象を防ぐにはどうするか。見通しのよい道路を走っているときは前方を見続けず、時折視線を動かして周囲の状況に気を配る癖を付けることだ。もし同乗者が乗っている場合は交差点手前でさりげなく「クルマ来てる?」と確認してみることも有効だろう。
コリジョンコース現象は航空機の世界でも重大事故の原因と考えられており、有視界飛行で飛ぶヘリコプターなどがたびたびその犠牲となってきた。人間は錯覚を起こすということを常に頭に入れて、慎重な運転を心がけよう。
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