■2000年代後半からの急成長したインド経済とスズキのビジネス戦略とは?
インド市場は90年代まで、100万台に達しなかった。これは、人口が10数億人と母数が多くても、貧富の差が極めて大きいことで、乗用車を所有できる人たちが限定されてきたからである。
それが、2000年代に入ると、ソフトウエアなどIT産業の発達などがキッカケとなり、インド経済が上昇機運となる。いわゆるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ等)と呼ばれる、経済新興国の一角としてインドが世界に注目されるようになったのだ。
筆者も2000年代以降、インドの自動車産業について現地取材する機会が増えていく。そうしたなか、日系メーカーでは、トヨタ、ホンダ、そして日産がインド市場への本格参入を始めた。だが、結果的にはそうした日系ビックの事業は、各社が当初計画していた規模感まで成長できなかった。
その理由について、2010年代前半にトヨタのインド法人幹部にニューデリーで直接話を聞いたことがある。
その際、彼は「インド市場を重視した戦略車エティオスを投入するも、やはりインド市場ではユーザーや販売店に対して、他の市場とは違うアプローチが必要だと痛感している。スズキさんに学ぶことがとても多い」と漏らしていたことを思い出す。
こうしたトヨタのインドでの実体験が、後のトヨタとスズキのEVやハイブリッド車での技術提携につながっていったと言えるかもしれない。
2010年代後半になると、マルチ・スズキは軽自動車ベースのモデルから、軽自動車で培った基本技術を日本でいう登録車であるAセグメントへの応用が充実し、さらに日本でも販売されているBセグメントも含めて、インド市場でのモデルラインナップは段階的に上級化してきた。
それは、インド市場全体の成長と同調する流れであり、インド市場は2015年に300万台を超え、直近の2022年は472.5万台となり自動車販売台数ランキングで日本を抜いて3位となった。2022年のインド乗用車市場で、マルチ・スズキのシェアは43%に及ぶ。
こうしたなか、オートエキスポ2023で、「ジムニー」5ドアとEV世界戦略車で「eVX」が世界初公開された。「ジムニー」5ドアは、日本でいう「ジムニーシエラ」の5ドアだ。グルガオン工場で2021年1月から、中南米、中東、アフリカ向けの「ジムニー」の生産を開始しており、ここに5ドアが加わる形だ。
インド政府は今後、EV、ハイブリッド車、CNG車(天然ガス車)など、多様な次世代車の普及を目指すとしている。そうしたインドの新たなる変化に、スズキがどう対応していくのか?
今後もインドでのスズキの動きから目が離せない。
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