路線バスや高速バスの路線上には、バスを降りるときにしか使わない停留所がよく置かれている。何のためにそうしているのだろうか。
文・写真:中山修一
路線ごとに理由は様々だが……
降車だけOKで乗車がNGなバス停は日本全国各地で見られる。そんな停留所が設置されやすい場所の一つに、駅前バスターミナルなどのバスの終点が挙げられる。
バスターミナルは得てして人の流れが多いものだ。駅を出てバスに乗る人とバスを降りて駅へ向かう人が、バスの発着場所付近で一緒くたになると、どうしても動線が悪くなってしまう。
そこで停留所を乗車用と降車用に分割すれば、来る人/去る人の動線が重なりにくくなり、よりスムーズな往来が期待できるわけだ。
バスの運用面でも、ターミナル内のバースが発車待ちの車両で全部埋まっていた際、降車用バス停を作っておけば、バースが空くまで乗客を車内で待たせてしまう心配がない。もし降車用が埋まっていても乗車よりは早く掃ける。
その代わり、降車用バス停を置くためのスペースが別途必要になるのが弱点だ。
まとまった敷地を確保できず、道路脇に乗車用と降車用の停留所を分散させる形で設置している駅前バス停や、フロアーごとに乗車と降車を分けている多層建てバスターミナルなども見られる。
限られたスペースの中に、苦労の跡が伝わってくるほど工夫してまで降車用をわざわざ設けるのは、無いよりもずっと効率が良くなる、ということなのだろう。
また、バス事業者同士の取り決めで降車用停留所が必須なケースや、都市間高速バスなどで一部停留所を降車のみに限定して取り扱う際の停車ポイントも降車用バス停の一種だ。
「そこで降りると便利だから」と、利用者の要望で降車用の停留所だけを新設したり、もともと普通の停留所だったのが、降りる乗客ばかりで乗車利用がまったくないため降車のみに切り替えたユニークな例もある。
「降車専用」がダントツ? 降車用バス停の表現方法
よく降車用バス停には独自の呼称が付けられている。中でも有名なのが「降車専用」だろう。
単に降車専用とだけ書かれている超シンプルなものと、その場所のバス停名など諸情報が併記されているタイプに分かれる。
降車専用が大多数を占めるのかと各地の停留所を観察してみると、降車場、降車所、降車停留所、降車ホーム、バスおりば……なかなかどうして表現方法のバラエティに富んでいて楽しい。
さらに、ちょっと「すみません回送車です」に通ずるものを感じるが、降車専用である旨を説明調に記したパターンも見つかった。
これといった固有の名称を掲げず、停止位置を大きく記し、利用者というよりドライバーに対して注意を促すタイプの降車用バス停も登場している。
降車用バス停と一括りにしても、全国に言い回しが何種類あるのか関心を惹くところだ。
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