黒いゴムが行ったり来たり……なんでクルマのワイパーって進化しないのよ!?

黒いゴムが行ったり来たり……なんでクルマのワイパーって進化しないのよ!?

 昭和の生まれのオッサン世代は最近のクルマの装備がまるで分からんが、唯一親近感(?)を覚えるのがワイパー。黒いゴムで窓を拭きとってくれる仕組みは、免許を取ったあの頃とまるで変わらない。それにしてもなんでワイパーは進化しないのか。その理由を考えてみた。

文/ベストカーWeb編集部、写真/ボッシュ、Adobestock、ベストカーWeb編集部(トビラ写真=Елена Гурова@Adobestock)

■進化してないわけじゃなくて競争に勝ち残ってきた!

20世紀初めのワイパー。支点が下ではなく窓の上にある
20世紀初めのワイパー。支点が下ではなく窓の上にある

 偉大な技術をいくつも発明してきたドイツのロバート・ボッシュ社。ここが自動車用ワイパーの歴史をまとめていて、それによるとワイパーは、1903年にアメリカの女性実業家メアリー・アンダーソンが発明したと記されている。雪の日にニューヨークの路面電車に乗っていたメアリーは、運転手が前を見るのに苦労する姿を見て、車内からゴムの付いた棒を動かし、窓が拭ける仕組みを思いついたという。

 それ以来、「棒状のゴムで窓を拭く」という自動車用ワイパーが実用化され、120年もの長きに渡って採用され続けてきた。この間、それに代わる技術が検討されなかったわけじゃない。強力な風を吹き付けて水を吹き飛ばしたり、ガラスを震わせて水滴を落とすという特許も出願されたが、ゴム製ワイパーに代わるだけの効果を持つには至らなかった。ガラス表面に撥水剤を塗るいわゆる「液体ワイパー」も、半永久的に効果を持続させることは非常に難しいようだ。

 つまりゴム製ワイパーは進化しなかったわけじゃなく、「進化の競争に勝ち残ってきた」といえる。実際、目立つものではないが、ゴム製ワイパーはその原理の上で着々と進化し続けてきたのだ。

■1920年代に電動化、1970年には雨滴感知式ワイパーも!

電動式ワイパーを考案したボッシュのポスター
電動式ワイパーを考案したボッシュのポスター

 その進化の歴史だが、1903年に発明されたワイパーは当時のクルマがまだ遅かったこともあり、しばらくは注目を集めなかった。ようやくアメリカのトリコ社が量産を始めるのが1917年のこと。1922年にはキャデラックが自社のクルマに標準搭載を開始するが、前後してイギリスのオースティン7(チャミー)もワイパーを装備したといわれる。

 当時のワイパーは手動式だったが、それでは面倒くさいと真空式ワイパーが生まれた。これはエンジン動力で負圧を作って動作させるワイパーだが、エンジン回転に合わせて速度が変わるので使いにくく、ほどなく電気モーター式にとって代わられる。これを発明したのがボッシュで、1926年のことだ。この頃にはフロントガラスに水を吹き付けるウィンドウウォッシャーシステムも検討されており、1938年にトリコ社が製品化している。

 第2次大戦後はクルマの造形が高度化し、ガラスには3次元曲面ガラスが用いられるようになった。ワイパーもこれに対応すべく骨組み部分に分岐点を作り、ゴムがしなってガラスに圧着する仕組みが採用された。骨組みがトーナメント戦の対戦図に似ていることから「トーナメント式ワイパー」とも呼ばれるが、これをボッシュが考案したのが1958年のことだ。

 この頃には車両の電子化も始まった。雨の降り方によって窓を拭く頻度が変更できる間欠式ワイパーが登場したのが1969年(フォード マスタング)だが、翌年にはシトロエンが雨滴を感知して自動で作動する間欠ワイパーを発表し、後に広く普及することになる。

 雨滴をきれいに拭きとれるように、ゴム自体の特性や形状も進化している。ベース部分とガラス接地部分でゴムの硬さを変えたり、風圧によってワイパーをガラスに押し付けるようエアロ機能を持たせた製品も登場した。現在では、複雑な構造を持つトーナメント式に代わり、ワイパーゴム自体に弾性のある素材を埋め込んだフラットワイパーと呼ばれるタイプが主流になりつつある。

 というわけで、ワイパーもしっかり進化を遂げてきたことが分かった。今度ワイパーのゴムを交換するときは、120年に及ぶワイパーの歴史を、思い出してほしい。

【画像ギャラリー】しっかり進化してました! ワイパーブレードの今昔(6枚)画像ギャラリー

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