ピカピカだったホイールが気づけば真っ黒に!??? 欧州では規制も開始!! ブレーキダストの原因と大事な対策

国産車と欧州車で汚れ具合が違うのは、パッドに含まれるスチール繊維含有量が違うから

 パッドは、スチール繊維の含有量が多いほど、ローターへの攻撃性が強まり、その結果ブレーキダストは多くなりますが、日本車は、(高速で使われることの多い欧米に比べて)それほど高いブレーキ力が要求されないため、ノンスチールの樹脂系パッドが使用されます。ブレーキの利きが素直でローターの攻撃性が小さく、ブレーキダストの発生も比較的抑えることができます。もちろん、多少のブレーキダストが発生しますが、少量なので比較的簡単に落とせます。

 ただ、高性能車や欧州車では、ブレーキの利きが(日本車よりも)求められるため、耐熱性に優れる、スチール繊維の含有量を10%~30%程度まで増やしたロースチールの樹脂パッドが使われており、摩耗が激しく、ローターへの攻撃性が強いため、ブレーキダストの発生が多くなります。ブレーキダストが付きやすいことで知られているBMWやメルセデスベンツなど欧州車は、このロースチールタイプを採用しているのです。

 また、最近増えているハイブリッド車やプラグインハイブリッド、バッテリーEVでも、ブレーキダストは減少します。電動車では、モーター/発電機の回転抵抗をブレーキ力として利用する減速回生ブレーキを使うので、フットブレーキの使用頻度が低下するためです。ちなみに、新型プリウスのフロントブレーキのディスクが小さいのは、回生ブレーキを増やしたため、ディスク径をコンパクトにすることができたからです。

BMW M3 Touringのホイール。BMWは、伝統的にスチール繊維含有量の多いロースチール樹脂パッドを使用し、ブレーキダストが付着しやすいことで知られている
BMW M3 Touringのホイール。BMWは、伝統的にスチール繊維含有量の多いロースチール樹脂パッドを使用し、ブレーキダストが付着しやすいことで知られている

現実的な対策は、コーティングとパッドの交換

 尖った鉄粉が突き刺さったブレーキダストを落とすのは、至難の業。除去をするのはかなりの苦労を伴うため、ブレーキダストの発生そのものを抑えることが大切で、現実的な方法としては、次の2つが上げられます。

 ひとつ目は、コーティング剤です。フッ素コーティングやガラスコーティングで、ブレーキダストなどの汚が付着しないようにする方法で、比較的容易に落とすことができます。カーショップなどで1万~2万円程度で施工することができます。

 ふたつ目は、ブレーキパッドの交換です。樹脂系でもスチール成分の少ないものに交換することでブレーキダストの発生を抑えることが可能です。ただし、ローターとパッドの摩耗量(摩擦力)を減らしてブレーキダストを減らすことは、ブレーキ力やブレーキフィールの悪化を招きやすいことを留意しなければいけません。

現実的な対策としては、こまめな洗浄や、コーティング、ブレーキパッドの交換。ただ、パッドの交換は、ブレーキ力が低下しやすいので、安全のため専門家に相談してからするようにしてほしい(PHOTO:写真AC_おいものにもの)
現実的な対策としては、こまめな洗浄や、コーティング、ブレーキパッドの交換。ただ、パッドの交換は、ブレーキ力が低下しやすいので、安全のため専門家に相談してからするようにしてほしい(PHOTO:写真AC_おいものにもの)

ユーロ7で、ブレーキダストが規制対象に!??

 2022年11月、欧州委員会が2025年施行予定の「ユーロ7」規制案を発表しました。その中で、新たにタイヤとブレーキから放出される粉塵規制が提案され、話題となっています。

 今後、電動車が増えれば、ブレーキダストは減る可能性があると前述しましたが、一方で電動化によって車重が増えると、タイヤやブレーキからの粉塵が増えることも予想されます。このことから、ユーロ7で粉塵規制が提案され、もし規制対象となれば、ホイールが汚れるという問題とは別に、ブレーキシステムや材料など、抜本的な見直しが必要となるため、ホイールの汚れに悩まされることも減っていくかもしれません。

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