進化を果たすことがその存在意義だったかつての三菱のラリーウェポン、ランサーエボリューション。通称ランエボはモデルを経るごとに性能を向上させ、価格も少しずつアップしながら登場したのだが、歴代で唯一「値下げ」を断行したモデルをご存じだろうか?
文/ベストカーWeb編集部、写真/三菱、ベストカー編集部
■なぜ歴代唯一の値下げが可能だったのか?
ランエボは歴代街乗り仕様のGSRと競技向けのRSグレードを設定していたが、基本的には世代を経るごとにそのGSRの価格は上昇していった。まあ、進化すればその分値上げになってしまうのは当然なのだが、実は歴代エボのなかで唯一、ベースのランサーが新型に進化したのに値下げを敢行したエボがある。
それが2000年発表のランエボVIIだ。GSRグレードの価格は、1991年登場の4代目ランサーをベースとする第1世代では1992年登場の初代エボIでの273万8000円に始まり、1994年登場のエボIIでは289万8000円、1995年登場のエボIIIでは296万8000円に達した。
1995年に登場した5代目ランサーがベースの第2世代では、歴代初の280psを達成したエボIVが299万8000円で登場。その後、1998年登場のエボV&1999年登場のエボVIでは3ナンバーのワイドボディ化や最大トルク向上などを果たして324万8000円と大幅にアップ。1999年暮れに登場したエボVIトミーマキネンエディションでは327万8000円と進化するごとに価格はアップしていった。
が、2000年発表のエボVIIは6代目ランサーセディアをベースとする第3世代モデルのトップバッターでACDなどの新機軸を入れながら、価格は299万円とエボVIトミーマキネンエディションから逆にダウンしていたのだ。
■WRCでのラリー予算を投入した!?
エボVIIのこの価格はなぜ実現できたのか。ふつうに考えれば最後の第2世代エボVITMEから大幅に性能を上げており、なおかつベースのランサーがフルモデルチェンジを果たしていたのだから首をひねる向きも多かったはず。
実は2000年当時、三菱はまだエボVIでWRCグループAに参戦していたのだが、同年7月に発覚したのがかのリコール隠し事件だった。この不祥事が三菱を揺るがした大事件となったのは間違いないのだが、実はこの値下げには三菱のラリー用の予算が投入されたという説がまことしやかに囁かれている。
その当時の社会情勢のなか、新型エボを値上げすることに逡巡した三菱がラリー予算を削ってまで車両本体価格を歴代で唯一下げることを断行したというのも頷ける話ではある。
この件について三菱関係者に話を聞いたのだが、「目標販売台数がそれまでより増えたことが関係しているのかもしれません」とのこと。しかし、エボIVが1万台以上販売していたことを考えると辻褄が合わない部分もある。いずれにせよ「真相は闇の中」ということかもしれない……。
担当は2000年春に満を持してエボVIトミーマキネンエディションを購入したばかりだったので、当時このエボVIIの登場には度肝を抜かれたものだった。スタイルは個人的に第2世代のほうが好きだったのだが、この値下げには釈然としない思いを抱いていたりする(笑)。
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