燃費も効率もプリウス式HVが有利!! なぜ日産e-POWERは市民権を得たのか!?

■トヨタ式は世界一高効率!? デメリットは?

シリーズパラレルシステム方式の代表的なシステムであるトヨタのTHS-IIを搭載するヤリス
シリーズパラレルシステム方式の代表的なシステムであるトヨタのTHS-IIを搭載するヤリス

 シリーズパラレル(シリパラ)方式は、シリーズ方式とパラレル方式の「いいとこ取り」をしたハイブリッドシステムです。エンジン単体での走行もできますし、駆動力を分配するギアを介して発電することもできます。またモーターでの単独走行もできますし、エンジンの駆動力にモーターの駆動力を合成して、非常にパワフルな加速もできます。

 メリットは効率の良さです。低速時から中速、高速領域まで、効率の良い動力で走行ができるため、燃費性能に優れています。シリパラ方式の代表的なシステムであるトヨタのTHS-IIは、「世界一の高効率ハイブリッド」といってよいでしょう(ホンダのe:HEVも分類的にはシリパラ方式ですが、トヨタのTHS-IIとはちょっと違います)。

 デメリットは、ハイブリッドシステムの複雑差ゆえのコスト高です。通常のガソリン車と比べ、40万円ほどアップしてしまい(ヤリスガソリンXとハイブリッドXの価格差)、この価格差をガソリン代で取り戻すには、およそ15万km以上は走らないとなりません。ハイブリッドカーは長く使うほど環境にやさしいクルマといえます。

 このシリーズ方式とシリパラ方式は、モーター単体の出力でも走行ができることから、まとめて(マイルドハイブリッドに対して)「ストロングハイブリッド」とよぶこともあります。

■キーテクノロジーを印象づけた「e-POWER」

2016年に先代のノートで初めて搭載された「e-POWER」
2016年に先代のノートで初めて搭載された「e-POWER」

 以上のように、ハイブリッドユニットにとって重要である燃費性能のポテンシャルは、シリーズ方式のe-POWERよりも、シリパラ方式のTHS-IIの方が上といえますが、知名度的には、e-POWERのほうが高い状況。

 これは、中身はシリーズハイブリッドながら、「ハイブリッド」と呼ばずに、「電気の力で走るe-POWER」とした、日産のマーケティングの成果だと考えられます。

 「電気の力で走る」というフレーズが、多くのライトユーザーの耳に残り、加えて、電気自動車並みの走りの良さも評判となったことで、2016年11月、先代ノートのマイナーチェンジで追加された「ノートe-POWER」は、発売から3週間で2万台、7カ月で10万台の受注を記録。

 2018年には登録車ランキングで、あの強敵のプリウスを退けて、第1位を獲得するという、空前の大ヒットとなりました。

 日産といえばほかにも、「ゼロ・エミッション車(環境負荷ゼロ)車」(2010年、初代リーフ登場当時)や、「やっちゃえNISSAN」(2015年)、「プロパイロット」(2016年、先代セレナ登場当時)など、個々のクルマの宣伝をするよりも、キーテクノロジーを印象付けようとするマーケティングをいくつか打ち出しています。

 ちなみに「e-POWER」の国内販売を、日産社内で強烈に後押ししたのは、星野朝子副社長(当時は国内マーケティング&セールス企画部の専務)だったことはあまり知られていません。社内では、「優れた嗅覚を持つマーケッター」として当時から有名だったそうです。

■ヤリス有利! e-POWERの高速燃費は今後対策が必要!!

 e-POWERは現在、ノート、キックス、エクストレイル、そしてセレナに設定されています。それぞれのモデルに合わせた発電用エンジンを設定しており、アクセル開度に合わせて遅れなくトルクが立ち上がる、リニアで気持ちの良い走りを提供しています。

 電力の回生量の強さを変えることで、ワンペダルドライビングといった走らせ方もできますし、反対に、通常のAT車のように滑るようなクルマの動きにもできます。

 ただ、前述したように、シリーズ方式であるe-POWERは、高速走行時には、エンジンがかかりっぱなしとなってしまい、どうしても燃費が悪化する傾向にあります。

 しかも、エンジンで発電したうえで、その電気でモーターを動かして走る、という2段階となるためにロスも大きくなり、直結モードのあるトヨタTHS-IIやホンダのe:HEVよりも厳しい状況です。

 参考に、e-POWERと、国内ハイブリッドカーのWLTCモード燃費の実例を以下に示します。エンジン駆動で走行するヤリスHYBRIDやフィットe:HEVでも、高速モードでは燃費が落ちる傾向ですが、ノートe-POWERは落ち代がもっとも大きく感じます。特に、エアコンを使用する時期は燃費に相当影響してきます。

国内ハイブリッド車とe-POWER車のモード燃費比較 燃費が伸びる郊外モードに対し、高速道路モードでは、e-POWERであっても、通常のハイブリッドであっても、燃費は落ちる
国内ハイブリッド車とe-POWER車のモード燃費比較 燃費が伸びる郊外モードに対し、高速道路モードでは、e-POWERであっても、通常のハイブリッドであっても、燃費は落ちる

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