燃費も効率もプリウス式HVが有利!! なぜ日産e-POWERは市民権を得たのか!?

キーテクノロジーを印象づけた「e-POWER」

2016年に先代のノートで初めて搭載された「e-POWER」
2016年に先代のノートで初めて搭載された「e-POWER」

 以上のように、ハイブリッドユニットにとって重要である燃費性能のポテンシャルは、シリーズ方式のe-POWERよりも、シリパラ方式のTHS-IIの方が上といえますが、知名度的には、e-POWERのほうが高い状況。

 これは、中身はシリーズハイブリッドながら、「ハイブリッド」と呼ばずに、「電気の力で走るe-POWER」とした、日産のマーケティングの成果だと考えられます。

 「電気の力で走る」というフレーズが、多くのライトユーザーの耳に残り、加えて、電気自動車並みの走りの良さも評判となったことで、2016年11月、先代ノートのマイナーチェンジで追加された「ノートe-POWER」は、発売から3週間で2万台、7カ月で10万台の受注を記録。

 2018年には登録車ランキングで、あの強敵のプリウスを退けて、第1位を獲得するという、空前の大ヒットとなりました。

 日産といえばほかにも、「ゼロ・エミッション車(環境負荷ゼロ)車」(2010年、初代リーフ登場当時)や、「やっちゃえNISSAN」(2015年)、「プロパイロット」(2016年、先代セレナ登場当時)など、個々のクルマの宣伝をするよりも、キーテクノロジーを印象付けようとするマーケティングをいくつか打ち出しています。

 ちなみに「e-POWER」の国内販売を、日産社内で強烈に後押ししたのは、星野朝子副社長(当時は国内マーケティング&セールス企画部の専務)だったことはあまり知られていません。社内では、「優れた嗅覚を持つマーケッター」として当時から有名だったそうです。

ヤリス有利! e-POWERの高速燃費は今後対策が必要!!

 e-POWERは現在、ノート、キックス、エクストレイル、そしてセレナに設定されています。それぞれのモデルに合わせた発電用エンジンを設定しており、アクセル開度に合わせて遅れなくトルクが立ち上がる、リニアで気持ちの良い走りを提供しています。

 電力の回生量の強さを変えることで、ワンペダルドライビングといった走らせ方もできますし、反対に、通常のAT車のように滑るようなクルマの動きにもできます。

 ただ、前述したように、シリーズ方式であるe-POWERは、高速走行時には、エンジンがかかりっぱなしとなってしまい、どうしても燃費が悪化する傾向にあります。

 しかも、エンジンで発電したうえで、その電気でモーターを動かして走る、という2段階となるためにロスも大きくなり、直結モードのあるトヨタTHS-IIやホンダのe:HEVよりも厳しい状況です。

 参考に、e-POWERと、国内ハイブリッドカーのWLTCモード燃費の実例を以下に示します。エンジン駆動で走行するヤリスHYBRIDやフィットe:HEVでも、高速モードでは燃費が落ちる傾向ですが、ノートe-POWERは落ち代がもっとも大きく感じます。特に、エアコンを使用する時期は燃費に相当影響してきます。

国内ハイブリッド車とe-POWER車のモード燃費比較 燃費が伸びる郊外モードに対し、高速道路モードでは、e-POWERであっても、通常のハイブリッドであっても、燃費は落ちる
国内ハイブリッド車とe-POWER車のモード燃費比較 燃費が伸びる郊外モードに対し、高速道路モードでは、e-POWERであっても、通常のハイブリッドであっても、燃費は落ちる

日産パワートレイン部長は「まだまだやりようがある、しっかり対策する」

日産が2021年2月に発表した、熱効率50%を実現するe-POWERの発電専用内燃機関の説明。自動車用ガソリンエンジンの平均的な最高熱効率は30%台で、40%台前半が限界とされている中、革新的な技術になるとして公開した
日産が2021年2月に発表した、熱効率50%を実現するe-POWERの発電専用内燃機関の説明。自動車用ガソリンエンジンの平均的な最高熱効率は30%台で、40%台前半が限界とされている中、革新的な技術になるとして公開した

 かつてe-POWERの高速燃費について、新型セレナe-POWERを担当した日産のパワートレイン担当部長に質問したところ、「いまのe-POWERは燃費が不利という事実もしっかりと受け止めている。ただその点に関しては、開発部隊としてはまだまだ“やりよう”があると思っており、今後しっかりと対策していきたい」としていました。

 2021年2月に発表した、熱効率50%を実現するe-POWER用発電専用エンジンや、その他の可能性(ポルシェのBEVタイカンのようにBEV用の2段ミッションの採用など、通常のモーター駆動車はギア1段のみ)も含め、まだできることはたくさん考えられます。

 新型プリウスに搭載された2.0リッターの新型THS-IIは、滑らかなエンジン回転やあふれ出るトルク感など、質感の良さが熟成の域に達しています。日本メーカーの技術の粋であるe-POWERとTHS-II、どちらが最後まで進化し続けるのか、両ユニットの今後の進化が非常に楽しみです。

「燃費」の人気記事を見る

燃費基準達成車と低排出ガス車のステッカーなぜ廃止? クルマに貼るステッカーはどんなものがあるのか?

国内自動車メーカーは、2021年4月以降の新規生産車から燃費基準達成車と低排出ガス車を示すステッカーの貼り付けを廃止した。これがなぜ廃止されることになったのか? 他のウインドウステッカーの役割等も交えて解説する

「ハイブリッド」の人気記事を見る

知っているのと知らないので大違い!! HVの「B」レンジを上手く使う簡単な方法と場面

多くのハイブリッドカーにある「Bレンジ」。坂道を下るときなどに使用するものだが、使い方がよく分からず、使っていない人も多いようだ。しかし、Bレンジは、使わなければ非常にもったいない装備。Bレンジの役割とメリット、上手な使い方をご紹介しよう。

【画像ギャラリー】まだまだ進化の余地あり!! e-POWER搭載車をギャラリーでチェック!(18枚)画像ギャラリー

PR:かんたん5分! 自動車保険を今すぐ見積もり ≫

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

JMS2025に出なかった大物たちの行方は?最新の注目車対決10番勝負『ベストカー12.26号発売!』

JMS2025に出なかった大物たちの行方は?最新の注目車対決10番勝負『ベストカー12.26号発売!』

ベストカー12.26号 価格590円 (税込み)  あの「ジャパンモビリティショー2025…