最近になってD型や楕円型など、異形のステアリングホイールが増えています。一般的な正円型よりも、見た目がスポーティでカッコいいため、丸いステアリングホイールは時代遅れのように感じている方もおられるようです。また、航空機の操縦桿のような形をした、ヨーク型と呼ばれるステアリングホイールも登場しています。
しかし、正円のステアリングホイールをずっと使ってきた世代としては、異形ステアリングホイールの操作性は気になるところ。様々な形状の異形ステアリングホイールそれぞれの特徴を整理しながら、正円型ステアリングホイールに取って代わる可能性があるのか、考察します。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:NISSAN、TOYOTA
100年以上ほとんど変わらず使い続けられている、正円型
ステアリングホイールの形状や大きさについては、特に法規上の制約はありませんが、操作しやすく、ドライバーの邪魔にならないことを配慮して、乗用車系では通常外径37~39cm程度の正円型ステアリングホイールが採用されています。
ステアリングホイールの径が大きいと、回転トルクは小さくなりますが、手動の操作量は大きくなります。一方、径が小さいと回転トルクは大きくなりますが、操作量は小さくてすむため、レーシングカーやスポーツモデルは、小さな操作量でクルマがクイックに反応するように小径のステアリングホイールが使われています。
また、小さな操作力で大きな操舵角が実現できるように、ステアリング機構にはステアリングギヤが組み込まれています。ギヤ比は一般のクルマは15~20程度で、例えばステアリングホイールを1回転させると、ギヤ比15ならタイヤは24度(360/15)、20なら18度(360/20)ほど、タイヤが進行方向に対して傾きます。ギヤ比が小さいほど、曲がりやすいので、先の小径化と合わせてF1マシンのギヤ比は10~15、スポーツモデルは12~15程度に設定されています。
正円型ステアリングは、1894年にパリで開催された自動車レースで初めて登場し、以降100年以上ほとんど変わらず使い続けられてきましたが、冒頭で触れたように、近年は正円でない異形のものが続々と登場しています。以下で、代表的な異形のステアリングホイールの特徴について紹介しましょう。
車種によっては実用的な「D型」
近年採用が進んでいるのが、下端部がフラットになったD型、あるいはボトムフラット型と呼ばれるステアリングホイールです。日産で採用例が多く、コンパクトカー「ノート」、ミニバン「セレナ」、SUV「エクストレイル」、バッテリーEV「リーフ」でD型を採用。スズキも3代目「スイフト」でD型を採用しています。
下端をフラットにすることで、ドライバーの大腿部とのクリアランスが確保され、乗降性が向上します。またフラット部があるために、ステアリングホイールをどれくらい切ったかの操作量が認識しやすいのもメリットです。D型を積極的に採用している日産ですが、一方でスポーツセダンの「スカイライン」やバッテリーEV「サクラ」、軽スーパーハイトワゴン「デイズ」は正円型と、モデルによって採用を使い分けているようです。
D型のデメリットとしては、ステアリングホイールを大きく切る必要があるときに、フラットな部分があるとスムーズな手の持ち替えが難しいこと、また旋回後にステアリングホイールが自然に戻るセルフアライニングトルクを利用する際も、正円型に比べて違和感が発生することです。
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