ホンダもうひとりの創業者が米国自動車殿堂入り!! 藤澤武夫氏の大偉業と「今のホンダ」に思うこと

■現在のホンダには3つの問題点がある

 このような喜ばしい発表があるなかで現状のホンダに対して、ホンダOBとして物申す機会をいただいたので、ここで語りたいと思う。

 ホンダの先達が創り上げてきたホンダのよき社風、マネジメントを破壊するような状況である。現状の問題点は、大きく言うと3点ある。ひとつ目は、イエスマンが多くなり過ぎ、自由闊達な議論が少なくなっている。ふたつ目は研究所統合により、創意工夫の発案が産み出せなくなった。3つ目は発想、実行までの時間が遅く、スピード感が鈍いこと。

2021年4月よりホンダの代表取締役社長を務める三部敏宏氏
2021年4月よりホンダの代表取締役社長を務める三部敏宏氏

 では、ひとつ目についてはここ10年余りでのTOPマネジメントの弊害に起因するが、TOPの言うことに従わせるようなマネジメントである。経営TOPが、現場責任者に任せないで、いろいろと物申してきたため、技術の前に上下関係なしとしてきたよき社風が蝕まれ、上司の言うことしかやらなくなった。

 この問題は今の三部敏宏現社長になって大きく改善されつつあるが、いったんイエスマンになった組織が蘇るには時間がかかるであろう。

 また、通常、開発、営業や生産などの機能主体の組織体制が運営されるが、ホンダの場合、機種プロジェクトとして、各々の機能代表のメンバーからなる開発プロジェクトチームが発足され、横差しのパワーが開発を進めていく。

 現在、その横差しパワーを持つ機種開発メンバーの権限が弱まっている。その結果として、縦横のバランスの取れた議論が少なくなった。

 そして、ホンダは魅力的な商品技術を産み出しにくくなった。

 ふたつ目については2年前に今までの本田技術研究所を辞め、本田技研工業に統合している。また、生産の研究部門であるホンダエンジニアリングも辞めた。今、本田技研工業として運営されている開発や生産のエンジニアにとって、どんなメリットが産まれたのか、甚だ疑問である。営業出身の上司に、技術的稟議を打診しても理解しにくいであろう。

 また、今まで、D開発のちょっと先の新技術を検討研究していたDR開発が産み出せなくなっている。このように藤澤武夫が産み出した研究所分離独立を破棄して何がよくなったのか? 今一度、見直すべきであると思う。

 最後に3つ目。開発スピードが遅い。さまざまな分野や部門において発想から企画、判断、実行の流れが極めて遅い。その原因はこれもさまざまな要因によると思うが、基本的には担当に任せない体質と三現主義に基づく運営がなされていないことによると思う。

■横軸のパワーを強めて組織を活性化し、本田技術研究所を戻すべし!

1973年、本田宗一郎氏(左)と藤澤武夫氏(右)のふたりがそろって引退した年の1シーン。重圧から解放されたのか、爽やかな笑顔が非常に印象的だ
1973年、本田宗一郎氏(左)と藤澤武夫氏(右)のふたりがそろって引退した年の1シーン。重圧から解放されたのか、爽やかな笑顔が非常に印象的だ

 それでは、ホンダに今必要なことは何か? まず、機種開発メンバーTOPに権限を持たせ、横軸のパワーを強めて組織の活性化を行うことが必要である。昔、私が携わっていた商品統括責任者(RAD=Representative Automotive Development)は今、BUO(Business Unit Offiser)という呼称になっているが、そのメンバー人選を重要視し、彼らに大きな権限を与えることである。

 また、コロナ禍とウクライナ戦争で値上がりしたコストに対して、企業プロジェクトでの削減展開を進めるべきである。

三部社長自身が宣言した将来への電動化戦略の具体化にはまず、そのやり方を内外に発信すべきと筆者は指摘する
三部社長自身が宣言した将来への電動化戦略の具体化にはまず、そのやり方を内外に発信すべきと筆者は指摘する

 三部社長が宣言した将来電動化戦略を具体化するには、今までの開発、生産、調達、販売、サービスのやり方ではすまないと思うが、そのあり方をもっと具体化し、ホンダ内外に発信していく必要がある。

 次に、開発、生産の研究部門を本田技術研究所に戻し、創意工夫のある技術、アイデアが産み出すようにすべきである。縦横のパワーバランスが良くなり、魅力的商品技術が産まれる体制となって、イエスマンが減少する。

 100年に一度と言われるこの転換期には、ホンダ黎明期に進めた藤澤武夫のような大きな仕組み創りが必要だと思う。

 それを実行できるのは、ホンダの現役の皆さんである。この提案が活かされることを期待している。

 最後に藤澤武夫さん、米国自動車殿堂入り、おめでとうございます!

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