「重さは鉄の1/3!! 」軽い、曲がる、エコ…なのにアルミ製ボンネットが浸透しないワケ

「重さは鉄の1/3!! 」軽い、曲がる、エコ…なのにアルミ製ボンネットが浸透しないワケ

 軽量で強度が高く、加工性に優れたアルミニウム合金は、自動車や新幹線、飛行機に至るまで、さまざまな乗り物に使用されている素材だ。“国産初のスーパーカー”として1990年にデビューした「ホンダ・NSX」は、アルミモノコックボディを採用したことでも知られているが、ボディの一部、特にボンネットにアルミ素材を採用しているモデルは、国産メーカーのクルマにも意外と多い。

 今回は、アルミ製ボンネットのメリットが多いと言われつつも国産車に浸透しない理由を考えみたい。

文/藤井順一、写真/トヨタ、スバル、日産、ホンダ、三菱自動車、写真AC

なぜ自動車の素材にアルミが使用されるのか

 自動車の素材としてアルミニウムが使用される最大の理由はその軽量さにある。鉄に比べて比重が約3分の1(鉄の比重7.8に対しアルミは2.7) と軽量なアルミニウムは、使用することで車両重量を軽減できるため、燃費性能アップやCO2排出量の削減、運動性能の向上にもつながる。

 またアルミニウムは、強度が高く、サビにも強いことから、安全性はもちろん、自動車の見た目を長くキープするためにも最適な素材と言える。

 加工性も高いため複雑な造形の部品加工にも向いており、様々な金属を添加することでことで異なる特性のアルミ合金を生み出すことも可能。鉱物資源としての埋蔵量も豊富でリサイクル性も高いなど、まさに自動車の素材として理想ともいえる特性を備えているのだ。

スポーティなクルマ=アルミ製ボンネットの理由

「重さは鉄の1/3!! 」軽い、速い、エコ…なのにアルミ製ボンネットが浸透しないワケ
国産初のスーパーカーと謳われる初代「NSX」は、画期的なオールアルミのモノコックボディを採用し、車重重量1350kg(MT車)を誇った

 外装にアルミを採用することによる軽量化は、自動車において単なる重量の軽減以上のメリットをもたらす場合がある。特に大きいのがボンネットなどフロント部分のアルミ化だ。構造上、前輪車軸より前方にあるボンネットやフェンダーなどフロント部分の軽量化は、低重心化や前後重量バランスの改善、ひいてはハンドリングに好影響をもたらす。「ポルシェ」を含むドイツ車メーカーやイギリスの「マクラーレン」、イタリアの「ランボルギーニ」など(フェラーリはオールアルミボディ)名だたるスポーツカーが採用していることからもその効果は明らかだろう。

 冒頭のNSXも、ホンダを象徴するスポーツカーとして、F1マシンに近づけるようなパフォーマンスと快適性や安全性など時代にマッチした装備との両立を図るうえで軽量化が必須となり、そのために世界初のオールアルミ・モノコックボディが採用された。これにより鋼板ボディに比べてボディ単体で140kg、車体全体で約200kgもの軽量化を実現し、今なお語り継がれる伝説的スポーツカーとなったことは、ご承知の方も多いだろう。

 他に、国産スポーツカー黄金期を飾った「日産・スカイラインGT-R(R32)」や「日産・フェアレディZ(Z32)」、「ユーノス・ロードスター」、歴代の「三菱・ランサーエボリューション」や「GR86/BRZ」もアルミ製ボンネットを採用している。アルミ製ボンネットはそういう意味では、スポーティなハンドリングを象徴する素材と言えるかもしれない。

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