なぜアルミ製ボンネットは普及しない?
自動車の素材として理想とも言えるアルミ合金だが、もちろんデメリットもある。最大の問題は製造コスト。鉄に比べてアルミは成形や溶接に高度な技術や専用の設備が要求され、部材として鋼材よりもどうしても割高となる。そのため採用できるクルマもコストアップの影響が少ない高価格帯のモデルか、あるいはそれを補うコストダウンが強いられる。
またアルミは素材として軽量なため、好燃費につながるとはいえ、その生産工程においてはより多くの電力を必要とすると言われていることから、真の意味でエコな素材かということに関しては疑問が残る。
鋼板に比べて傷や凹みなど板金の修理代が高くつきやすいのも欠点で、交換ともなればドライバーの費用的な負担は大きくなる。シャシーとは異なり、ボンネットには構造上の強度がそれほど求められず、安全面からも最低限の強度となっているため、指で押しただけで凹んでしまうこともあるなど取り扱いはややデリケートだ。
ちなみに、磁力タイプの初心者マークやもみじマークが付けられないのも、アルミ製ボンネットのクルマならではの悩みと言えるかもしれない。
以上のようなことがアルミ製ボンネットが直接的、間接的に普及しない理由と考えられる。だが、アルミ製ボンネットには、多くのデメリットを補って余りあるスポーティなハンドリング、なによりスポーツカー然とした“その気にさせるロマン”があることも間違いない。
ここからは、国産車を中心にそんなアルミ製ボンネットを備えたラインナップをご紹介したい。
フロントフード&フェンダーの軽量化は、スバルの水平対向エンジンを生かす必須条件
一般的な直列やV型エンジンよりも全高が低く、軽量・コンパクトな特性を持つ水平対向エンジン。そのエンジンを搭載した車両をドイツの「ポルシェ」と並び生産している自動車メーカーが「スバル」だ。水平対向エンジンの最大のメリットは、低重心化による操縦性と走行安定性の確保にあると言われる。
こうした水平対向エンジンのメリットを最大化するためなのか、スバル車は伝統的にエンジンフードやフロントフェンダーといったフロントセクションにアルミ素材が採用されている。
大ヒットとなったレガシィ(BL/BP)や、世界ラリー選手権で活躍した「インプレッサ(GC/GD))」といった歴代の名車はもちろん、「フォレスター」や「XV」、「レヴォーグ」といったモデルまで、そのラインナップは多岐に渡る。
ボンネットやフロントフェンダーは構造上、前輪車軸よりも前に配置される重量物であり、この部分が重ければ慣性モーメントの拡大を招き、軽快なハンドリングの妨げにもなる。つまり、全長の短く低重心な水平対向エンジンのメリットがスポイルされないよう、鋼材よりも軽量なアルミ製ボンネットやフロントフェンダーを採用しているというわけだ。
スバルのハイパワーモデルと言えば、ボンネット上に設けた冷却用のエアインテークが有名だが、これも一般的な前置きのインタークーラーではなくエンジン上にインタークーラーを配置するためのもので、ターボの効率とともに車両前方が軽いことのメリットが薄れないようにという考慮からだという。
見た目には感じられない部分だが、“漢のロマン”とも言うべきこうしたマニアックな姿勢が“スバリスト”と称される熱狂的なファンに支持される理由の一つなのだろう。
コメント
コメントの使い方アルミと一言にいっても非常に多く種類があり、強度も価格も得意分野も千差万別なのですが、意外と知られていません
なのでナックルやマウントやサスタワー等の高額アルミ使わないと性能落ちてしまう部分じゃなく、外装であるボンネットやフェンダーにこそ量産車は向きます
ですからBRZ含めたスバル車は理に適ってる。GRヤリスのように左右ドアやハッチまで全てアルミでカーボンまで使えたら尚良いですが、せっかくの安さが