「重さは鉄の1/3!! 」軽い、曲がる、エコ…なのにアルミ製ボンネットが浸透しないワケ

アルミ製ボンネットを採用した高級サルーン

 コスト増にも繋がるアルミ製ボンネットの採用は、ある意味では高級車の証とも言える。国産高級車の一部にもアルミ製ボンネットを軽量化はもちろん、付加価値的に採用しているモデルが多く見られ、下に挙げた以外にも「レクサス」ブランドの各車で採用されている。後部座席専用のVIPなクルマというより、自らハンドルを握るような高級ドライバーズカーに、アルミ製ボンネットを採用しているモデルが多いのは、「メルセデス・ベンツ」や「BMW」、「アウディ」などドイツ勢のサルーンをベンチマークとしているからなのだろか。

●トヨタ・クラウン

 12代目の通称「ゼロ・クラウン」以降、“アガりの高級車”としてだけでなく、プレミアムなドイツ御三家に負けじとドライバーズカーを標榜してきたクラウン。ついにはドイツ・ニュルブルクリンクサーキットで走行テストまで敢行するまでに。

 その走行テストの結果をフィードバックして開発されたのが、2012年14代目としてデビューした先代「トヨタ・クラウン」だ。ボンネットフードやフェンダーのアルミ化の他に、アルミダイキャストのフロントサスタワーを採用するなど、ボンネット以外にも各所にアルミ素材を採用することで、高剛性かつ軽量なボディを実現。高い走りのポテンシャルを誇った。

「重さは鉄の1/3!! 」軽い、速い、エコ…なのにアルミ製ボンネットが浸透しないワケ
軽量化のためにボンネットやサスペンションにアルミが採用された12代目の「クラウン3.0アスリート」。以降、旧来イメージからの脱却を目指し、アルミ素材が積極的に採用された

●日産・フーガ

 一方、そのクラウンと長年ライバル関係にあった「日産・セドリック/グロリア」の後継モデル初代「日産・フーガ」も、ボンネット、トランクフード、ドア内外板にアルミ素材を採用することで、通常のスチール製に比べ約38kgもの軽量化を実現したモデルだ。

 マニュアルモード付きの5速ATも、マニュアルモード選択時にシフトダウンを行うとブリッピングしてエンジン回転を合わせるなど、当時のスポーツATとしては秀逸で、クルマ好きの心をくすぐるモデルだった。

「重さは鉄の1/3!! 」軽い、速い、エコ…なのにアルミ製ボンネットが浸透しないワケ
セドリック・グロリアの後継として2004年にデビューした「日産・フーガ(Y50)」は、”走りの日産”らしいスポーティなセダンだった

●ホンダ・レジェンドハイブリッド

 アルミ素材を生かした、フラッグシップモデルと言えば、2015年に発売された「ホンダ・レジェンドハイブリッド」もハズせない一台。1基のエンジンと3モーターハイブリッドで四輪を駆動する同車は、システム全体では最高出力382ps、最大トルク47.2kgmを誇るハイパワーサルーンだ。

 ボディにはアルミと鋼板を結合する新工法が採用され、ボディ各部へのアルミ素材の採用が容易となり、これによりドアの外版やボンネット、フロントフェンダーなど各部にアルミが採用され、鋼板製との比較で約35kgの軽量化を果たした。

 車両重量は1980kgというから、カタログスペック上の印象においてこの軽量化が果たした役割は小さくはないだろう。

「重さは鉄の1/3!! 」軽い、速い、エコ…なのにアルミ製ボンネットが浸透しないワケ
アルミによる軽量化も図られた「ホンダ・レジェンド」は、400psに迫る出力ながら16.8km/L(JC08モード)の燃費を実現した

アルミ製ボンネットにはメーカーの思想が詰まっている

 ボンネットに限らずアルミ素材を採用するクルマは、以前のような少量生産の一部のクルマから、量産モデルを経て、現在は燃費性能を追求する次世代車への採用が主たる目的となりつつある。近年では鋼板を薄板化することで軽量化を図るといった代替の技術も進化してきている。

 それでもアルミ製ボンネットを採用しているクルマが魅力的に映るのは、そこにメーカーとしてのマインドやストーリーを感じさせてくれるから。求めるものが燃費であれ、ハンドリングであれ、異素材に夢を託したクルマに魅力を感じるのは自分だけではないはずだ。

【画像ギャラリー】意外と普及していた!? まだまだあるアルミ製ボンネットを採用したクルマたち(9枚)画像ギャラリー

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