時代先取りしすぎ!? 奇抜すぎ!? 国産車の「トンガリ機能4選」

運転中は作動してるのかわからないが、何だかスゴそうな「アクティブスポイラー」

時代先取りすぎ!? 奇抜すぎ!? 国産車の「トンガリ機能4選」
アクティブ・エアロ・システムを搭載したGTO。フロントスポイラーは約50mm下方に張り出すことでフロントの揚力を低減、リアスポイラーは角度を14度増加させてダウンフォースを確保した

 国産車が本格的なパワーウォーズへと突入した80年代後半。エンジン出力の向上とともにメーカーが注力したのはエアロパーツを始めとする空力特性だ。中でも7代目「日産・スカイライン」に搭載された「GTオートスポイラー」は、車速に連動してフロントスポイラーが可動する世界初のシステムだった。

 同種の機構としては、1988年に発売された「ポルシェ・911(964型)」に搭載された電動リアスポイラー(車速80km/h以上になると、リアのエンジンフードがせり上がり走行安定性を向上させる)が存在していたが、70km/hに達するとスポイラーがバンパーからせり出し、50km/h以下になるとバンパーに自動で格納される機構は同社が世界初採用。車体前方の揚力を抑え、空気抵抗も低減させるなど、実証された空力特性とともに、自動にもマニュアルでも操作可能だった可変スポイラーは大きな話題となった。

 電子制御やオートマチック機構といえば負けていないのが往時の三菱自動車。1990年デビューのフラッグシップスポーツ「GTO」のホットバージョン、ツインターボモデルには、さらに進化したアクティブスポイラー機構が搭載されていた。「アクティブ・エアロ・システム」と命名された同機構は、車速が80km/hになるとフロントのスポイラーがダウンするのと同時に、リアのスポイラーの角度がアップし、走行安定性が向上。ハイパワーなエンジンやグラマラスなボディラインとあわせ、GTOを象徴する装備だった。

 この他、国産車では1993年の「トヨタ・スープラ(JZA80)」も車速に応じて自動で作動、格納される「アクティブスポイラー」をオプションで設定していた。まさに国産ハイパワー競争最盛期を彩ったアクティブスポイラーはその後、空力特性の高いボディデザインの研究や、電動機構がもたらす重量アップやコスト増などとの兼ね合いから、国産車では過去の遺産となっていった。

 だが、元祖である「ポルシェ・911」や「ポルシェ・ボクスター」、「アウディ・TT」、V6エンジンとモーターを搭載した新世代のハイブリッドモデル「フェラーリ296GTB」など、欧州の自動車メーカーの一部にはアクティブスポイラーはいまだ搭載され続けており、車速に併せて適切に形状を調整するエアロパーツの機構は、時代遅れとは言い切れないものがある。

 2021年に惜しまれつつ絶版車となった「ホンダ・S660」には、リアに可動式のスポイラー「アクティブスポイラー」がオプションで設定されていたが、そういう意味でも同車は貴重な存在だった。

ルーフベンチレーションは競技志向か、“フル装備”未満の苦肉の策か

時代先取りすぎ!? 奇抜すぎ!? 国産車の「トンガリ機能4選」
CR-Xのルーフベンチエーションは、ルーフのやや後方に配置。車内からレバーを引いて、通気口を作動し、風量の2段階の切り換えや風向の調節が可能だった

 重量増やエンジンのパワーロスへの配慮からエアコンが取り払われ、安全面から窓を締めきって走る夏場のレースでは、車内の温度は灼熱と化す。これを軽減するため、モータースポーツ向けの競技車両には、窓以外の部分から外気を取り込んだり、車内の熱気を逃がしたりするベンチレーション(通風・換気)が搭載される場合がある。

 このようなベンチレーションは、一般のクルマにはまずお目にかかれない代物だが、かつて国産車にはこのベンチレーションを装備した市販モデルがあった。ホンダのコンパクトスポーツ「CR-X」だ。

 1983年にリリースされた初代「CR-X」は、通称“バラード”とも呼ばれ、車両重量わずか800kg(1.5リッター)の軽量コンパクトなボディは、切れ味鋭いハンドリングで兄弟車の「ホンダ・シビック」と共にホンダのスポーツイメージの立役者となった。

 その初代CR-Xにオプション設定されていたのが「ルーフ・ラム圧ベンチレーション」で、文字通りルーフ後方に設けられた開閉式の空気穴から、車内に空気を導入するという換気システム。当時のルーフベンチレーションといえば、「世界ラリー選手権」をはじめとするレーシングカーの専用設備。それをスポーティモデルとはいえ、市販車に採用してしまうのはレース活動に積極的だった、いかにもホンダらしい選択。

 当時はパワステ・エアコン・パワーウィンドウを搭載したクルマを“フル装備”と呼んだ時代。ターゲットである若年ドライバーが、高価なオプションだったエアコンがなくても、快適に車内で過ごすためなのか、あるいはサンルーフよりも手軽な喫煙者向けの換気対策なのか、いずれにしても苦肉の策として生まれたのが、ルーフからフレッシュエアを取り込むこの装備だった。

 残念ながら、このエアコンの代替設備と思しきルーフベンチレーションは、CR-Xがリリース翌年マイナーチェンジを受けた際にあっさりと廃止され、その後採用されることはなかった。

 ただし、モータースポーツ出自のルーフベンチレーションは、90年代にWRCを席巻したスバルにより市販車に再び登場。1994年に登場した「インプレッサWRX STi」シリーズにオプションで設定されたほか、市販車ではないがインプレッサのライバル「三菱・ランサーエボリューション」には、メーカー直系のチューニング部門である「ラリーアート」から、競技車両向けのルーフベンチレーションキットも発売。

 窓が開けられ、エアコンも搭載する市販車にとっては不要とはいえ、トヨタが今年WRCに送り出す「GRヤリス・ラリー1 ハイブリッド」にも搭載されるなど、ルーフベンチレーション自体は電力消費や重量増にもつながりにくいエコな換気、空調システムであり、競技車両を思わせるそのルックスにロマンを感じるクルマ好きは少なくないだろう。

次ページは : 濃いめの味付けだった4輪操舵機構が、繊細な大人の味付けになって復権!?

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