時代先取りしすぎ!? 奇抜すぎ!? 国産車の「トンガリ機能4選」

濃いめの味付けだった4輪操舵機構が、繊細な大人の味付けになって復権!?

時代先取りすぎ!? 奇抜すぎ!? 国産車の「トンガリ機能4選」
“デートカー”として人気を博したプレリュードは、四輪ダブルウィッシュボーンのサスペンションに、四輪アンチロックブレーキをオプション設定、さらに4WS機構を搭載していた

 私事で恐縮だが、かれこれ30年近く前の学生時代、友人が乗る「ホンダ・プレリュード」を運転させてもらったことがあった。その際、車庫入れでやけに小回りの利く回頭性の良さに驚き、そのことを告げると、友人は「このクルマは4WSだから」と得意げに教えてくれた。運転経験の浅い当時の筆者でも体感できるほど、4WSの効果は絶大だった。

 4WSとは、ハンドル操作に対して通常の前輪だけでなく後輪にも舵角がつく4輪操舵(4WS=4 Wheel Steering)を意味する言葉だ。

 1985年に日産の7代目「スカイライン(R31)」に世界で初めて採用された「ハイキャス(HICAS=High Capacity Actively Controlled Suspension)」が、そのルーツとなる日本メーカー発祥の技術だ。同車が採用したハイキャスは、ステアリングの操舵に対し、前輪だけでなく後輪が同じ方向に向く(=同位相)ことで走行安定性を高めたものだった。

 その後、後継モデルの「スカイライン(R32)GT-R」では、ステアリング操舵に対し、後輪を前輪の向きとは逆側に一瞬向け(=逆位相)、すぐに同相とすることで回頭性を高めた「スーパーHICAS」へと進化。

 以降、「ホンダ」、「マツダ」、「三菱」とメーカー各社が同種の4WS機構を搭載していった。中でも冒頭で触れた1987年に発売された3代目「プレリュード」は、高速域では同相、低速では逆相となる、車速に連動した機械式の4WS機構「舵角応動型4輪操舵システム」を採用し、低速でのステアリング操作に対して後輪が逆相に動く操舵感は、FFらしからぬ小回りの良さをもたらした。

 三菱自動車も、R32スカイラインと同時代に生まれた旗艦スポーツカー「GTO」で、フルタイム4WDとともに4WS機構を搭載。車速50km/h以上では操舵が同相となるなど、4輪のトラクションを最適に制御することで曲がる4WDスポーツの新時代を切り開く礎となった。

 と、一時代を築いた4WSだったが、リアサスペンションの進化やESC(電子制御の横滑り防止機構)の搭載、後輪操舵の機構に伴う重量増やコストとの兼ね合いなどから採用が見送られて衰退。だが近年、大型セダンやスポーツモデルを中心に4WSは復権の兆しがある。

現行「レクサス・LS」が発表された際に搭載した「DRS(ダイナミック・リア・ステアリング)」は、低速域で逆相となることでロングホイールベースながら、先代モデルと変わらない小回り性を実現したことが話題となった。実はレクサスは「LDH(レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム)」と呼ぶ4輪のタイヤ切れ角制御を「LS」や「LC」、「RC」などの車種にも搭載。アンダーステアでは後輪を逆位相にしてより曲がるように、オーバーステアでは同位相にして安定させる進化した4WSを導入してきた実績がある。

また、同種の機構は「BMW・7」シリーズや「メルセデスベンツ・S」クラス、「アウディ・A8」シリーズなどにも搭載されており、現行「ポルシェ・911」にも走行状態などのデータを元に、後輪の舵角をコンピューターが最適に制御してくれるシステムが搭載されているのだ。

 かつて、運転歴の浅い筆者にも体感できるある意味大味な機構だった4WSは、ドライバーにその存在を悟らせない程の隠し味的なものとなり、違和感を与えることなく効果だけをもたらす新たな4WSへと進化しているのだ。

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