ミニバンにはないセダンの意外なメリット
セダン離れという言葉とともに、日本車から4ドアセダンの選択肢が減っていった。それでも、たとえば2018年の乗用車ブランド名商別販売台数を見ると、上位50位の中に、トヨタ カローラ、クラウン、カムリ、プレミオが入っている。また、ホンダ シビックの中に4ドアセダンがあるし、マツダ アクセラにも4ドアセダンの選択肢はある。
50位以内に入らなくても、レクサスのLS、ES、GSがあり、日産には、シーマ、フーガ、スカイライン、ティアナ、シルフィーが、またホンダのレジェンド、アコード、グレイスもある。マツダにはアテンザ、アクセラ、そしてスバルにレガシィB4、インプレッサG4というわけで、各社とも4ドアセダンはそれなりに残している。
では、4ドアセダンが残される理由は、どこにあるのだろうか。
改めて4ドアセダンの価値を考えれば、大人が5人乗れる客室が確保されている。ミニバンやステーションワゴンのような背の高い荷物は難しくても、荷室は奥行きがあり、容量としてはかなり物を積むことができる。重心が低いため走行安定性に優れる。
特にミニバン、SUV、そしてステーションワゴンと比べ、3ボックス形状であるがゆえに荷室部分が低いので、後輪側の重心が低いことにより俊敏な操縦性を得られる。車の後輪は走行安定性を担うので、実は後輪側の重心の低さは操縦性を左右することになる。スポーツカーとまではいかなくても、4ドアセダンの運転が楽しいのはそのためだ。
さらに、背が低いことによって、実は高齢者にも乗り降りしやすい側面がある。年配になるほど体の節々の可動範囲が狭まり、また筋力の衰えによって、足を上げて踏ん張り体を持ち上げるのが難しくなる。そのため、背の低い4ドアセダンの座席に腰から座る乗り方が便利だ。
ミニバンやSUVに手すりを付けたとしても、床の高い車は高齢者には乗りにくい。降りる際には、4ドアセダンなら介護者が腕を引っ張ってあげれば外に出られる。SUVのように座席が高いところから降りる際、足がすぐ地面に着けないと不安になり、着地した時に体のバランスを崩しやすい。
衰退したセダン 復活の時は意外に近い?
日本は、世界に先駆け高齢化社会になっていくといわれている。元気なお年寄りで平地は歩けても、足が上がりにくくなったり、体を持ち上げるのに苦労したりするようになる。そのようなとき、従来からの4ドアセダンやステーションワゴンは、乗り降りしやすい車となるのである。
目新しさや家族の事情でミニバンやSUVを選んできた人たちも、再び4ドアセダンやステーションワゴンに戻る消費行動が、年齢を重ねることで起こるのではないか。また、ミニバンやSUVから車の利用をしはじめた人たちにとっては、4ドアセダンやステーションワゴンが目新しく見えるようになってくるかもしれない。
4ドアセダンやステーションワゴンが注目を集める時代が、間もなく来るのではないかと、実は私は秘かに思っているのである。
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