背面タイヤはどこいった? SUVブームの影で姿が見えなくなったワケとは!?

■背面タイヤが廃れてしまった理由とは?

 1980年代から1990年代に起こったRVブームの時には、背面スペアタイヤは当時のSUVにとってスタンダードだった。トヨタのランドクルーザー、ランドクルーザープラド、ハイラックスサーフ、日産のテラノ、サファリ、三菱のパジェロといった本格派クロカンモデルはもちろん、トヨタのRAV4、日産 ラシーン、三菱 RVR、ダイハツ ビーゴといったライトなクロカンモデルも背面スペアタイヤを装着していた。

 まさに、背面タイヤは「ヨンク(四駆)」の象徴だったわけだが、現行のSUVカテゴリーを見渡すと、国産車で背面スペアタイヤを採用しているのは、なんとスズキ ジムニーとジムニーシエラのみとなってしまっている。

タイヤがパンクした際に、ボディ背面にあれば外して交換しやすいが、ボディ下部にあると手間がかかる?
タイヤがパンクした際に、ボディ背面にあれば外して交換しやすいが、ボディ下部にあると手間がかかる?

 廃れた理由のひとつに、クロカンモデルを含めたSUV全体のモデルが、悪路よりも舗装路での走行安定性や乗り心地が求められるようになったことが挙げられる。ボディ後端の高い位置に十数kgもの重量があるスペアタイヤを装着すると、カーブを曲がったり車線変更をしたりするときに慣性の悪影響を受けやすくなる。

 SUVが一般的な乗用車として選ばれるようになった昨今では、悪路での走破性よりも舗装路でスマートかつ安全に走れることが重要視されるから、操縦安定性を低下させる可能性がある要因が排除されるのはやむを得ないことと言えるだろう。

 また、背面スペアタイヤを装着するためには専用のキャリアが必要となる。昨今主流となっている樹脂製のリアゲートでは、スペアタイヤとキャリアの荷重には耐えられないし、強度をもたせるためには補強を施すか、専用設計にするしかないが、これはコスト上昇に繋がる。

 さらに、SUVでもパンク修理キットが標準となり、スペアタイヤがオプション扱いとなってしまった。こうした背面スペアタイヤの装着に合理性や必然性を見いだせなくなったことも廃れてしまった理由と言っていい。

■今後も復活する希望が薄いもっともな理由

悪路や林道を走り、登坂路を登る……。懐古趣味かもしれないが(笑)、やはり背面タイヤが付いているだけで絵になる!
悪路や林道を走り、登坂路を登る……。懐古趣味かもしれないが(笑)、やはり背面タイヤが付いているだけで絵になる!

 おそらく今後も背面スペアタイヤが復活する可能性は低い。なぜなら、今はSUVでも電動化が進んでおり、スペアタイヤよりもさらに重く、搭載スペースが必要となる駆動用バッテリーを積まねばならないからだ。

 ワイルドなイメージを演出するためには、背面タイヤは効果的なアイテムである。しかし、それ以外の部分では、無用の長物になってしまったというのが現状であると言わざるを得ない。いろいろな観点から、必然性がなく、メリットよりもデメリットのほうが目立ってしまい、背面スペアタイヤは今後も採用する理由がほぼないと言わざるを得ない。

 しかし、背面スペアタイヤを採用したモデルに共通してきたのは、高い水準の悪路走破性を有していること。クロスオーバーSUVが全盛となり、クロカンモデルが激減している昨今、ハードなオフロードで抜群の走破性を発揮し、心に余裕をもって走れるSUVを求めるなら、背面スペアタイヤを装着しているというのが、SUV選びにおけるひとつの基準になるかもしれない。

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