■二兎を追う者は一兎をも得ず、で絶滅したルネッサさん(日産・2001年絶滅)
あ、そこ! 頭ぶつけるから気ぃつけて! ……すんまへん、そこそこ屋根の高いクルマですのに、中は妙に天井が低うて。マーチはんでも室内高1270mmはあるんですが、ウチは1130mmしかないんですわ。そやからお座りになる時は足投げ出すか、体育座りでないとあきまへんねや。
なんでこんな天井低いかって? そらあんた、ウチのドンガラはもともとアメリカさん向けの電気自動車ですさかい。こう見えてフロアは二重構造の高床になっとりまして、床下には12個のリチウム電池を格納できるんですわ。
へ? このクルマの床下にも電池があるのかって? ……そんなんあるわけおまへんがな! ウチはエンジン駆動ですさかい、ナメてもろては困ります! へ? こないワケわからんクルマ要らん、もう帰る、と? ですよねぇ……。ウチもちょうど、もう商売たたもうと思うてたとこですわ。ほな、さいなら。
■完全に目測を誤ったエディックスさん(ホンダ・2009年)
統計によりますと2000年における30歳~34歳男性の未婚率は約43%、女性のそれは約27%であります。
この数字からわかるのは「大半の男女が婚姻をしている」という大まかな事実です。そして男女が婚姻していれば妊娠および出産へと至る可能性は高く、出産後は送迎等のため自家用車を必要とするケースが増えるものであります。
そして独自調査によればその際、3列シート車ではなく「3席×2列の全座席独立シート」のほうが好ましい、という検討結果になりました。
前列中央にチャイルドシートを設置できれば、ご両親は走行中も両サイドからお子様の様子を見守れるため、大いに安心できるはず──という骨太な予測であります。が、結果としてぜんぜん売れませんでした。
え~、いろいろ申し上げましたが、端的にまとめますと「ちょっとニッチすぎた。ぶっちゃけ目測を誤った。すまん」ということであります。現場からは以上です。
■全部盛りで自爆したギャランスポーツさん(三菱・1996年絶滅)
ボク、「ありのままの自分」で世に出るのが怖かったんです。ほら、欧州はさておき日本では5ドアハッチバックって不人気ですから。
だから、当時のRVっぽいグリルガードとルーフレールをまずは足しました。でもそれだけじゃまだ不安だったんで、パジェロっぽい2トーンカラーにもしました。「スポーツカー風の雰囲気も足したほうがいいかな?」と思い、リアウイングも付けたんです。
売れたかって? “全部盛り”が好まれるのはラーメンだけなんですよ。
■クール過ぎて絶滅したR1さん・R2さん(スバル・2010年絶滅)
R1「兄さん、大衆はいつだって愚かだよね」
R2「弟よ…そんなことは言うもんじゃーない…」
R1「だってそうじゃないか! ボクらは見てのとおりスーパーおしゃれさんだし」
R2「そうだな」
R1「ほかの軽自動車みたいなショボい3気筒じゃなくて4気筒エンジンだし」
R2「そうだな」
R1「狭いけど、ほとんどの人はクルマなんてどうせ1~2名でしか乗らないし」
R2「そうだな」
R1「なのに……無駄に背が高くてダサい連中ばかりが売れて、ボクらが絶滅するなんて納得いかないよ! 世の中の連中は見る目がないよ!」
R2「……弟よ。我々は試合に負けたのだ。“時代に負けた”といってもいい。でも、勝負には決して負けていないと兄さんは思ってる。そのことを誇りに、静かに眠りにつこうじゃないか。それでいいんだ」
R1「兄さん……悔しいよ」
コメント
コメントの使い方