「ホンダ・インサイト」がプリウスに立ちはだかる!
時を同じくしてハイブリッドカーの開発を進めていたのがホンダだった。プリウスにより、先行を許した彼らが狙ったのは“ガソリン車世界ナンバー1の低燃費”。しかも、それをレース活動で培った技術で達成しようというのだから実にホンダらしい。キーとなったのは軽量化だ。
1999年にデビューしたホンダ初のハイブリッドカー「インサイト」は、当時の“ガソリン車世界ナンバー1の低燃費35.0km/L”の看板をひっさげて投入された、1.0リッター、3気筒SOHCエンジン+モーター搭載の3ドアハッチバックだ。
国産初のスーパーカーと謳われたNSXの技術を投入したボディは、押出成形材とダイキャスト成形材を組み合わせたアルミ製の骨格に、アルミプレス材と樹脂製フェンダーで構成したもので、車両重量は超軽量な820kgを達成。
リアホイールを覆うホイールスカートも印象的な空力ボディはCd値0.25を誇り、軽量化されたファブリックシート2脚の2シーターは、後席部分にバッテリーを搭載するためラゲッジースペースが制限され、35.0km/Lの燃費も5速MTモデルでの数値など、まさに“燃費スペシャル”とも呼べる仕様だったが、ホンダらしいスポーティなパッケージングには“らしさ”も感じるものだった。
ちなみに、当初ホンダが搭載したハイブリッドシステム「Honda IMAシステム」は、主役がエンジンでモーターがサポート役となるパラレル方式。構造がシンプルなため軽量で、運動性能や燃費にも貢献した。
明暗を分けた第2次ハイブリッドカーバトル、プリウス独走への道
こうして、ハイブリッドカーナンバー1の低燃費の座をインサイトに奪われたプリウスはすぐさま反撃を開始。初代プリウスに改良を施し、2000年には29km/L、2002年の最終モデルでは31.0km/L(10・15モード)を達成させ、2003年発表の2代目プリウスでその覇権の奪取に成功する。
第2世代へと進化したプリウスは、現行モデルにも通じる「トライアングルモノフォルム」の空力ボディを採用した5ドアハッチバックとなった。ホイールベースを150mm伸ばし、ボディサイズも全長135mm、全幅30mm拡大することで居住性をアップ。
先代の「THS」を発展させたハイブリッドシステム「THS II」は、1.5リッターのDOHCエンジンと50Kwモーターの組み合わせで出力を向上させながら、燃費は35.5km/L(10・15モード)で、ライバルを上回ってみせたのだ。
圧巻は「ハイブリッド・シナジー・ドライブ」と呼ぶ新システムで、経済的であると同時に高回転化されたモーターは従来の1.5倍に出力が向上。クラスを超えたパワー感を備えながら、経済的なプリウスは瞬く間に販売台数ランキングで存在感を高めていった。
この2代目プリウス、クルマとしての実用性を大幅に向上させながら、世界トップクラスの低燃費を実現するのは無論たやすいものではなかった。ボディの空気抵抗低減はもちろんのこと、アンダーカバーでフロア下まで整流する気合いを見せ、Cd値は実に0.26。フロントボンネットフードもアルミ材を使用するなど、スポーツカー顔負けの技術を投入。先行していたインサイトが掲げたCd値や燃費の数値に対する執着がうかがえるものだった。
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