数値だけを追い求める時代の終焉
実はこのフィットが達成した記録にもからくりがあった。36.4km/Lを達成したグレードは同モデルで好評だったリアシートのアレンジが不可、ガソリンタンク容量も32リッターに抑えられ、リアワイパーを不採用とするなど各所に徹底した軽量化が図られた上、ボンネットの素材もこのグレードのみアルミ製を採用したまさに“究極の燃費スペシャル”とも言うべきもの。
そうまでして得た燃費ナンバー1の王座は同年マイナーチェンジを受けたアクアが37km/Lを達成し、あっさりと奪還されてしまう。トヨタはホンダの挑戦を横綱相撲でいなしていった。
以降、2015年の4代目プリウスの40.2km/L、2016年に発売された「日産・ノート e-POWER」の37.2km/L、孤軍奮闘のマツダのクリーンディーゼルに、EVなど、散発的なバトルは見られるものの、この頃になるとドライバーたちは車両価格との折り合いや実質的な燃費、走行性能など、高燃費車や環境負荷の少ないクルマ選びをよりフラットな視点で見比べるようになり、自動車メーカーによる、数値だけを追い求める燃費バトルは沈静化していった。
スペック至上主義の脱却とクルマとしての本質的な魅力
燃費はクルマの性能はもちろん、ドライバーの運転技術や走行する環境など、さまざまな状況により変化するものであり、そもそもメーカーの公表する数値との乖離があることはご承知の通りだ。2017年の夏以降からは、メーカーが表示する燃費の試験方法が国際的な基準と同じ「WLTCモード」に切り替えられたことで、輸入車との燃費の比較がしやすくなった他、より実燃費に近い数値となった。
燃費が良いクルマは確かに魅力的だが、標準的な装備が削られ、ユーザーが不便を感じる仕様では本末転倒だろう。だが、技術力のあるトヨタとホンダが切磋琢磨したハイブリッドカーの燃費バトルがあったからこそ、ガソリン価格の高さが世界屈指といわれる日本でも、何とかクルマに気兼ねなく乗れている現状があるのかもしれない。
こんな好敵手の存在があったからこそ、日本が世界に誇るハイブリッドカーはブラッシュアップされ続けてきたのだ。
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