搭載レイアウトの難度が高い
コストとともに、大きな問題が搭載性です。頑強なディーゼルエンジンは、ガソリンよりもひと回り大きく、ターボも必須なので、本格的なハイブリッドシステムと組み合わせてエンジンルームに収めるのは困難を極めます。エンジンルームの小さなコンパクトカーであればなおさら。さらに問題となるのは、排気系レイアウトです。
ディーゼルエンジンには、厳しい排ガス規制に適合するために、床下を通る排気系にPMを捕集するDPFと、NOxを還元除去する尿素SCRが必要です。通常DPFは円筒状で、その径はエンジン排気量によりますが、200mm以上必要。しかも、溜まった煤を定期的に800度以上に昇温して除去するので、熱に弱いリチウムイオン電池との距離を確保して断熱を強化しなければいけません。
e-POWERなら、課題が軽減できる可能性も
ただ、トヨタやホンダが進めているシリパラ方式のハイブリッドシステムではなく、日産の「e-POWER」やダイハツの「e-SMART」のようなシリーズ方式であれば、市販化できる可能性はあると考えられます。
遊星ギアを使った動力分割機構などで発電用と走行用の2つのモーターを使い分けるようなシリパラ方式に比べ、シリーズ方式は、発電機を回してバッテリーを充電、充電されたバッテリーでモーター走行というシンプルな機構なので、搭載レイアウトの面で有利。
またディーゼルのシリーズ方式(以降、仮に「ディーゼルe-POWERシステム」とよぶ)は、基本的に定点運転ができるので、ディーゼルエンジンの最大の課題である排ガス低減システムが簡素化でき、コスト低減ができる可能性があります。DPFで採取するPM(粒子状物質)や尿素SCRで還元するNOxの排出量は、運転条件によって大きく変動しますが、定点運転であれば、その条件に絞ってエンジンから排出されるPMとNOxを効果的に低減でき、その結果DPFや尿素SCRの負担が減るので、DPFやSCR触媒容量を減らせ、その制御も簡素化できます。
ディーゼル「e-POWER」が市販化できるとしたら高級SUVか
以上のように、「ディーゼルe-POWER」であれば、レイアウトの課題が軽減され、ある程度コストアップを抑えられる可能性があります。ただし、市販化できるとしたら、コストアップを許容できる車格の高いクルマであり、またDPF+尿素SCRが搭載できる十分なスペースが確保できる、高級SUVのようなモデルに限定されると思われます。
これができるのは、シリーズハイブリッドとディーゼルの両方を開発している日産だけですが、残念ながら日産は現在ディーゼル車からほぼ撤退状態であり、可能性は低いでしょう。ディーゼル車に積極的に取り組んでいるマツダについても、欧州メーカーと同様にディーゼルについては48Vマイルドハイブリッドで対応する方針で進めているので、今後、「ディーゼルe-POWER」が世の中に登場してくる可能性は、残念ながら期待できません。
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すでに数年前から欧州メーカー、国内メーカー問わずディーゼルから撤退する動きが加速しています。厳しいディーゼルの排ガス規制に対応するためには、新型エンジンの開発や大型投資が避けられないためです。ディーゼルをやめ、一気にバッテリーEVへ向かおうというのが、大半のメーカーの方針のようです。
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コメント
コメントの使い方MX30というシリーズハイブリッドモードもあるユニバーサルプラットホームの練習台が有るので、そういうのから構造的な可能性を探るなら
下駄足を追加する形で、複数の車体に装着できるようなパワーソースラインを統一したユニバーサルデザインまで広げることが必要でしょうね。
但し、BYDが低価格BEVを出してくるので、コスト的な面での優位性も無いと生き残れませんが。