EUが進めているCO2の新規制。簡単に説明すると、メーカーごとに生産するクルマ全体のCO2排出量の上限が定められ、それを超えると1グラムごと(!)に罰金が課される、というものだ。
「メーカーごとの規制値」なので、いきなり「このクルマはもう売ってはいけません」と特定のクルマが指定されることはないのだが、いずれにせよハイパワー車、大きな馬力のクルマたちはだんだん肩身の狭い思いをしてゆくことは間違いないだろう…ということなのだ。
ハイパワーを誇るクルマたちを楽しめる時代。その終焉が確実に迫ってきている。そうなると、考えたくはないが最悪消滅してしまう車種もあるかもしれないわけだが……。では、もしほんとうに消滅してしまうならその前に乗っておきたい、今後貴重な存在になりそうなモデルはどれだろう?
GT-R、スカイライン、WRX STI、アルファード・ベルファイア、そしてスープラ。名だたる日本の300psオーバー車から、自動車ジャーナリスト 国沢光宏氏と岡本幸一郎氏が選ぶベスト10は次のとおりだ。
※本稿は2019年2月のものです
文:国沢光宏、岡本幸一郎/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年3月26日号
■規制の違うアメリカではなくならない?(国沢光宏のベスト10)
EUのCO2排出規制、問題になるのは燃費である。ということで、電気を組み合わせたパワーユニットのクルマなら生き延びられます。好例がNSX。電池搭載量を増やすなど、いくつかの対応策を打てば対応可能。
また、スープラのような車種も、トヨタとBMWはハイブリッドやPHV技術を持っているため、生き延びることはできると考えていいだろう。逆に私が挙げた10車種についちゃ極めて難しいんじゃなかろうか。
〈国沢光宏の今乗っておきたいベスト10〉
1位 日産 GT-R[NISMO含](570ps)
2位 スバル WRX STI[RA-R含](308ps)
3位 トヨタ ランドクルーザー(318ps)
4位 ホンダ シビックタイプR(320ps)
5位 レクサス LC500(477ps)
6位 日産 フェアレディZ[NISMO含](336ps)
7位 トヨタ マークX350RDS(318ps)
8位 スバル WRX S4(300ps)
9位 トヨタ アルファード/ヴェルファイア(301ps)
10位 レクサス LX570(377ps)
これらのモデルを見るとパワーユニットからして古く、燃費の改善は無理。考えてほしい。WRX STIに搭載されている2Lターボ、1980年代の技術です。いまだにポート噴射だしアイドリングストップさえ付いておらず。トヨタの5L V8も古い。
というか、大排気量エンジンは、それだけで生き残れないと考える。ただアメリカがEUと同じ規制内容にするかといえば、そんなことないと思う。
むしろトランプ政権におけるアメリカは、この手の規制を緩めていく方向。スープラの場合、アメリカ市場がメイン。ナスカーもスープラのシルエットで今年から参戦するほど。
アメリカでは厳しいCO2排出規制を適用する動きにならないため、2021年から販売できなくなるようなことなどないと思う。当然ながら我が国はアメリカの意思が強く反映される社会システムになっており、大きな問題はないでしょう。
とはいえ、問題はほかにある。CO2排出規制より決定的な高性能車に対する規制となるのは騒音規制である。2022年から始まる『フェーズ3』と呼ばれる騒音規制、先日もスープラを開発した多田さんや、GT-Rの田村さん、NSXの水上さんなど雑談中、話に出たのだけれど、エンジン音を皆無にしても、高性能車はタイヤ騒音でアウトになる厳しさだという。つまりエンジンでなくモーター駆動のクルマも高性能タイヤ履けばアウト。
高性能車はグリップのいいタイヤを履かなければ成立しない。しかも騒音規制、日本も導入される方向。新型車に装着されているタイヤはすべてECOカーのような低転がり&低騒音タイプになっちゃうと思う。
ただし! これまたアメリカが口出ししてくると考えます。アメリカ製のグッドイヤーとかについちゃ認可されるなんてことだってありうる。いずれにしろアメリカはEUと違う。そう心配しないでいい?
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