指定があれこれあってわからん! 結局タイヤの空気圧ってなにが正解なのよ?

■タイヤの空気は刻々と抜けている

気温が下降傾向にある時期は、気体の容積自体も小さくなるので、タイヤの空気圧も意外なほど低下していく(Christian Schwier@AdobeStock)
気温が下降傾向にある時期は、気体の容積自体も小さくなるので、タイヤの空気圧も意外なほど低下していく(Christian Schwier@AdobeStock)

 空気圧が厳格ではないもう一つの理由は、空気圧が変化するからだ。

 たとえば空気圧を見るのは一般的には冷間時だが、実際にはガソリンスタンドなどで給油時についでに点検することが多い。それなりの距離を走って、タイヤ内部の空気も温まっているはずだ。ということは厳密には冷間時ではないので、指定空気圧にきっちりと合わせてもそれほど正確ではないことになる。

 タイヤの組成の問題もある。空気中の成分でも、ゴムを通過するほど小さな分子は少しずつ通り抜けてしまうので、放っておくと徐々にタイヤ空気圧は減少してしまうのだ。

 特に気温が下降傾向にある時期は、気体の容積自体も小さくなるので、意外なほど低下していく。寒くなってきたと感じたら、給油時に必ずタイヤの空気圧を点検するようにしたい。

 気温が上昇傾向にある時期には逆のことが起こり、少しずつ抜けているはずなのに空気圧は意外と低下しない。このあたりは車種やタイヤ銘柄などによっても変わってくるので、日ごろからタイヤの空気圧を測っておくことが判断の目安にもなる。

 つまり、あくまで指定空気圧は目安とするものであり、絶対的なものではない。好みや目的に応じて微調整してもいい、いや調整してほしいものなのだ。

■最近は若干高めの空気圧がトレンド?

燃費への影響やバーストの危険などを考えると、タイヤの空気圧が低すぎるのは好ましくない(umaruchan4678@AdobeStock)
燃費への影響やバーストの危険などを考えると、タイヤの空気圧が低すぎるのは好ましくない(umaruchan4678@AdobeStock)

 最近はタイヤ空気圧を若干高めにする傾向がある。それは低い方が弊害が多いからだ。

 タイヤは走行中、変形しながら回転している。路面に接触する部分は荷重と衝撃で潰れ、それが回復することが連続的に行われているのだ。

 極端に空気圧が低いと、高速走行など連続的なタイヤ変形が続く状態ではバーストする危険性も高まる。タイヤの変形が大きいスタンディングウェーブ現象によって発熱してタイヤが壊れてしまうのだ。それを防ぐためにも、タイヤの空気圧は指定空気圧より大きく低下させないことが望ましい。

 さらに最近は省燃費指向が高まっていることから、指定空気圧自体もタイヤの変形量を抑えるために高めに設定することが多い。

 前述の、空気が少しずつ抜けていってしまう分も見込んで、ディーラーやガソリンスタンドでは高めに調整する傾向にあるようだ。そこにはユーザー自身が空気圧管理をあまりしなくなったという理由も潜んでいるようだが。

 燃費が良くなるのなら、指定空気圧よりどんどん高めにしたくなるものだが、実際にはタイヤ空気圧はあまり高くし過ぎるのも問題がある。

 タイヤが硬くなって乗り心地が悪くなるだけではない。問題はタイヤの接地面積が減少することと、タイヤ剛性が高くなりすぎてグリップ力は低下し、特にウエット路面でのブレーキ性能が低下することだ。

 さらにはタイヤのトレッド中央が減りやすくなって偏摩耗したり、ハブベアリングやサスペンションなど足回りの負担が増えて寿命が短くなるといったデメリットも抱える。

*   *   *

 まとめになるが、乗車人数や積載荷重によって指定空気圧が分けられているものは、1名乗車でもフル乗車の空気圧までなら問題ないだろう。単一の指定空気圧の場合は、10~15%増以内に止めておけば安心だ。

 わずか20kPa(0.2Bar)の違いでも、乗り味はかなり異なる。さまざまな空気圧を試して自分好みの乗り味に調整してみるのも、カーライフの楽しみの一つだ。

【画像ギャラリー】わずかな違いが乗り味を変える!! 奥深いタイヤ空気圧の世界(4枚)画像ギャラリー

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