弱点になるか? 長所になるか?? BEV普及の鍵を握る中古バッテリー再利用への活路

中古バッテリーの状態に応じてリユース

 市場から回収されるバッテリーの劣化具合はさまざまなので、劣化状態に応じてリユースの対応も変わってきます。劣化の状況とそれに対する対応は、次のように3つに大別することができます。

「状態の良いモジュール」は、安価な交換用として再製品化
 バッテリーの状態は、バッテリーを構成する複数のモジュール(単電池セルの集合体)の残存容量で判断します。劣化の進行はモジュールごとに異なり、劣化度合いの判定は、最も劣化の進んだモジュールの容量で判断しているようです(安全上の理由とのこと)。バッテリー容量が例え60%と判断されても、他のモジュールには実用可能な70%以上のモジュールが多く残存していることが多く、そうした状態の良いモジュール同士を再び組み直して再パッケージ化をして、安価な交換用バッテリーとして再製品化しています。 

「中間状態のモジュール」は、他の電源装置としてリユース
 BEVのバッテリーは、2トン前後もあるような重たい車体を動かすため、大容量のバッテリーを使っていますが、劣化してBEV用としては使えなくなったバッテリーであっても、(劣化の状態によりますが)他の電源装置に使うことは可能。たとえば、運転時間の短い小型BEV向けや、災害時のバックアップ電源のような定置型電源などに活用されます。

「状態の悪いモジュール」は、リサイクル
 従来は、焼却してスラグ化処理して道路の基盤材など、バッテリーとはまったく違う用途に使われることが多かったようですが、現在はバッテリーからレアメタルなどの原材料を効率よく回収する方法が試みられています。現在は、まだ処理が複雑でコストもかかりますが、さらなる改良によって、燃やさずCO2を発生させないレアメタル回収法が開発されています。

日産リーフのリチウムイオンバッテリー。バッテリーパックは、バッテリーセルの集合体であるモジュールを複数配列した構成
日産リーフのリチウムイオンバッテリー。バッテリーパックは、バッテリーセルの集合体であるモジュールを複数配列した構成

ますます用途が広がっているリユースバッテリー

 多くの自動車メーカーは、すでに10年ほど前から、使用済みバッテリーを太陽光発電や風力発電と組み合わせて、自社の工場や販売店などの非常用バックアップ電源や施設の電力消費の平準化のために活用しています。欧州では、使用済みバッテリーを使った蓄電装置による充電ステーションも登場しています。

 自動車メーカーだけでなく、電池メーカーや電力会社、電機メーカーなども、自動車メーカーとタイアップしたり、自動車メーカーから使用済みバッテリーを買い入れて、多種多様な商品をつくり出しています。フォークリフトやゴルフカート用バッテリー、定置型電源、ポータブル電源、バックアップ電源などに活用しているほか、身近なところではコンビニや自販機にも使われています。このような取り組みによって、(コストの問題はあるものの)使用済みバッテリーの多くがリユースできるようになっています。

リーフの使用済みバッテリーを利用した日産自動車、JVCケンウッド、フォーアールエナジーが開発したポータブル電源
リーフの使用済みバッテリーを利用した日産自動車、JVCケンウッド、フォーアールエナジーが開発したポータブル電源

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 「走行時のCO2はゼロだけど、バッテリー製造時や廃却時にCO2が出るよね」といわれ続けているBEVですが、様々な形でバッテリーのリユースが実現できれば、より環境にやさしいクルマとなることができます。バッテリーのリユースやリサイクルは、性能やコストと同じように、BEVにとって最重要テーマなのです。

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