長距離ドライブの救世主? 電池を傷める悪魔?「急速充電」はガンガン行っていいのか?

長距離ドライブの救世主? 電池を傷める悪魔?「急速充電」はガンガン行っていいのか?

 長距離ドライブには欠かせない急速充電。ところがこれを繰り返したEVは、バッテリーの劣化が早いという情報もある。はたして急速充電は善なのか悪なのか? EVオーナーである筆者が急速充電の謎について調べてみた!

文/佐藤耕一、写真/Adobestock、ベストカーWeb編集部(トップ画像=rockstarpictures@AdobeStock)

■急速充電1回で何キロ走行できる?

おおむね20kW以上の電力で充電が可能な急速充電器。一番多いのは40~50kWのタイプだが、このパワーでもまだ心許ない(YUTO PHOTOGRAPHER@AdobeStock)
おおむね20kW以上の電力で充電が可能な急速充電器。一番多いのは40~50kWのタイプだが、このパワーでもまだ心許ない(YUTO PHOTOGRAPHER@AdobeStock)

 急速充電とは、おおむね20kW以上の電力で充電が可能な充電器のことを指す。一番多いのは40~50kWのタイプで、高速道路のSA/PAにある急速充電器は、7割以上がこのタイプだ。

 しかし、一番多いこのタイプも急速充電器としてはパワー不足だ。50kWでどれくらい充電できるのかを考えると分かる。

 充電時間は1回30分(0.5時間)なので、充電量は50kW×0.5h=25kWh(キロワットアワー)のはず。しかしバッテリーが冷えていたり過熱しているとこの通りにならない。というか、額面通り25kWh充電できることはまずない。条件がよくてもせいぜい20kWhだろう。

 それでどのくらい走れるのかと言うと、車種にもよるが、モデルYやアリア、IONIQ5などのミドルサイズSUVだと電費は6km/kWh前後、つまり6×20=120km。30分充電して120kmしか走れないということになる。

 さらに冬場や上り坂ルートだともっと走行距離は減る。5km/kWhつまり航続距離100kmも覚悟したほうがいい。バッテリー残量が減ってきた時など、充電1回で走行100キロは、いかにも心許ない。

■最近増えている90kW級の落とし穴

テスラの「スーパーチャージャー」は120kWを中心として250kWという超ハイパワーな急速充電器も用意(sheilaf2002@AdobeStock)
テスラの「スーパーチャージャー」は120kWを中心として250kWという超ハイパワーな急速充電器も用意(sheilaf2002@AdobeStock)

 最近では、90kW以上の高性能な急速充電器も増えてきている。2022年末時点で、SA/PAに配備される全体の26%が90kW以上となった。この割合は現在さらに高まっている。

 ところが90kWになって充電量も2倍近いのかというと、これまたそう単純ではない。90kWタイプには2台同時に充電できるものがあり、その場合は45kW前後のパワーしか出ない。混雑するSA/PAの90kWのパワーを頼りに計画を立てるのは、ギャンブルになりかねない。

 こうした充電のストレスが比較的少ないのがテスラだ。「スーパーチャージャー」という独自の充電ネットワークを全国展開しており、120kWを中心として250kWという超ハイパワーな急速充電器も数多く用意している。

 ただ残念なことに、スーパーチャージャーはSA/PAではなく一般道にある。高速道路料金を余分に払い、寄り道して充電しなければならないのだ。それでも充電周りのストレスから解放される威力は絶大で、寄り道しても利用する価値はあるといえる。

 こうしたハイパワー充電を設置する動きは加速しており、たとえばメルセデス・ベンツは、350kWという超急速の充電ステーションを全世界で1万基以上配備する計画を今年1月に公表している。

次ページは : ■バッテリーの劣化が下取り価格に影響する

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