長距離ドライブの救世主? 電池を傷める悪魔?「急速充電」はガンガン行っていいのか?

■バッテリーの劣化が下取り価格に影響する

EVが積んでいるリチウムイオン電池は、急速充電による一定のダメージは避けられない(Chalermphon@AdobeStock)
EVが積んでいるリチウムイオン電池は、急速充電による一定のダメージは避けられない(Chalermphon@AdobeStock)

 350kWものパワーがあれば、もはや30分待つ必要もない。というかできない。普通のEVなら10分もしないうちにフルチャージだ。このようなハイパワーな充電器が普及すれば、EVの利便性は一気に向上するだろう。

 ただ、ひとつ気になることがある。バッテリーへの悪影響だ。

 一般に、急速充電はバッテリーにダメージを与えると言われている。スマートフォンの電池の持ちが悪くなったり、一昔前にはバッテリーが膨らんで筐体がパカッと割れてしまったりしたが、あれも無茶な急速充電が主たる原因といわれる。

 EVも同じリチウムイオン電池を積んでおり、急速充電による一定のダメージは避けられない。

 もちろん自動車メーカーは、その悪影響を最小限にとどめる努力をしている。冒頭で触れた「バッテリー温度によって充電量が絞られる」という話題も、裏を返せば電流量を抑えてバッテリー劣化を抑えようという対策に他ならない。

 そのためバッテリー劣化が即トラブルに繋がるケースは少ないが、EVを下取りに出した際、査定価格が安く見積もられたりする事例は起きているようだ。

■バッテリーの劣化は充電の頻度にも左右される

バッテリーの劣化は急速充電だけでなく、充電の頻度にも影響されるようだ(umaruchan4678@AdobeStock)
バッテリーの劣化は急速充電だけでなく、充電の頻度にも影響されるようだ(umaruchan4678@AdobeStock)

 貧乏性な筆者は、350kWなどという超高速充電器は、差し迫った状況でないときっと使えないだろう。バッテリーの劣化も気になるし、利用料もきっと高くなる。

 つい最近の動向としては、普通充電器を増やし、停車のたびにこまめに充電しながら運用する、という想定の普通充電ネットワーク事業がいくつか起ち上がっている。

 たくさんの普通充電器を商業施設やホテルなどに設置し、ショッピングモールにいるあいだの5時間や、宿泊の時の一晩などで普通充電しておけば、移動途中の急速充電を使う機会が減り、結果として財布にもバッテリーにも優しい運用ができる、というコンセプトだ。

 これがいわゆる“目的地充電”と呼ばれるもので、この半年ほどで目的地充電の有用性が見直され、注目されている。

 ちなみにバッテリーの劣化は急速充電だけでなく、充電の頻度にも左右される。リチウムイオン電池はいわゆる「注ぎ足し充電」には比較的強いのだが、50~70%程度で頻繁に充電するよりも、20%~80%程度の範囲を使い切るように充電したほうが長持ちする傾向があるようだ。

 EVの普及が進むにつれ、ユーザーの利用シーンに応える形でインフラの成長が今後見られることになるだろう。

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