理論上は振動が少なく、自動車エンジンの最高の形と呼ばれるのが直列6気筒エンジン。最近では新型スープラがBMWの直6で復活するなど、話題も豊富だ。
2000年代初頭で日本市場をはじめ世界中から消えた直6エンジンだが、最近になりまた復活の兆しを見せている。
しかしクルマ好きを唸らせる直6、上を見れば1000万円クラスのクルマが多い。簡単に買えない車種が多いのも事実だ。
今回は「高くて極上な直6」と「安くてもいい直6」を4台選びました。究極のコスパ最強の直6を選びます。
文:鈴木直也/写真:BMW、ダイムラー、編集部
■BMW E46 M3が史上最高の直6搭載車だ
【歴代最強コスパ直6 第1位:BMW E46 M3】
FR車の衰退とともにオワコンと化していた直6が復活しつつある。
その先鞭をつけたのはベンツの最新M256型だが、トヨタがBMWと組んでスープラに直6を復活。
マツダもなにやら次世代高級車で直6を企画中という噂もあり、あちこちから直6見直しの機運が盛り上がっている。
こうなると、この間ひとり黙々と直6を作り続けてきたのBMWの功績が光る。古くはE3/E9系にはじまり、伝説のM1でDOHC化されたオリジナルストレート6。

このM1用M88型をベースとした市販バージョンS38が、BMWの直6神話を創る原動力となる。
当初はM6/M5用ユニットとして少数が生産されていたM88ベースのS38だが、E36系で初めて3シリーズに搭載され直6のM3が誕生。
ここからE46シリーズに至る約10年のライフスパンで、直6“Mユニット”の人気がポピュラーなものとして定着してゆく。
いかにBMWといえども、量産型直6ではそんなに気持ちよく吹き上がるわけではない。そんな中で、やはりMシリーズの直6だけはいつ乗っても別格のスポーツテイスト。
高回転域のパンチやレスポンスが圧倒的なのはもちろん、官能的な吸気サウンドや7000rpmを超えてスムーズに吹き上がるバランスの良さなど、生産終了後10年を経ても未だにその魅力を語るファンは多い。

それを踏まえて言えば、おそらくコスパ的にはE46の程度の良い中古車を手に入れるのがベスト。
NA時代のBMWストレート6ならではのリニアなトルク感、そして硬質な回転フィールは、現在のターボ化された直6とは一線を画す味わい。
古き佳き時代のスポーツエンジンならではの官能性能がたまらないのだ。
E90系でV8化されて一時途絶えていた直6Mユニットは、次世代のF80でターボ化されて復活する。
この世代からM以外の標準型BMWストレート6もすべてターボ化されたため、結果としてM系のエンジンと標準モデルの差は以前より縮小している。
スペック的には、F80系M3/M4が431ps/550Nmに対して、340iが326ps/450Nmとそれなりの差はあるが、NA時代と違って標準エンジンでも日常領域のトルクは十分以上に強力。
よっぽど飛ばさないと、Mらしさを実感するところまで至らない。
もちろん、回転フィールの精密感や5000rpmを超えて炸裂するパンチはMならではの醍醐味ではあるが、残念ながら日常生活でそんな領域ばかり使っていると、ガソリンも免許の点数もすぐにエンプティとなってしまいかねない。
■現行BMWでベストコスパ直6はM2コンペティション
【歴代最強コスパ直6 第2位:BMW M2コンペティション】
よって、現代BMWでコスパ最高の直6はM240iあたりでイイんじゃないの、と言いたいところなのだが、M240iの701万円に対してM2コンペティションは876万円(6MT)。
この微妙な価格設定が悩ましい。1000万円超えのM3/M4に比べると、M2コンペティションの価格がえらく魅力的に見えてしまうのだ。

標準モデルのN55は前世代のN54から過給システムを簡略化してシングルターボ化されたが、決して悪いエンジンじゃない。
いや、それどころかスポーツエンジンに分類してもいいくらい、トルキーで回転フィールも好ましい。
しかし、M用のS55型は、フラッグシップモデルとして徹底したチューニングが施されていて、鍛造鋼を軟窒化処理したクランクシャフトを使うなど、そのスペックはコンペティション級。
いくら実用上は大差ないとか言われても、マニア心を大いにくすぐるスペックが満載なのだ。

このあたりが、BMWの商売の上手いところ。じつに巧みにクルマ好きの物欲を刺激してくる。
結局は「この価格帯で趣味性の高いクルマを買う場合、175万円の差は超えられないハードルとは言えない」と自分を納得させることになる。
というわけで、魅力的な直6のコスパ第二位は、BMW M2コンペティションということになってしまうわけだ。
■ベンツの直6ディーゼルは中古でも狙いた
【歴代最強コスパ直6 第3位:ベンツSクラス S400d】
趣味性を優先しためBMWにワンツーをさらわれたが、機能性本位で評価した場合はメルセデスの新型直6シリーズも抜群にいい。
メルセデスの新世代直6には、ガソリンターボのM256型とディーゼルターボのOM656型が存在する。
ガソリン仕様は48Vマイルドハイブリッドシステム搭載で、電動スーパーチャージャーやフライホイール直結のスタータージェネレータによる回生/アシストなど、いかにも現代的なハイテクエンジン。

ターボラグをまったく感じさせないスムーズなトルク特性や、意外なほどシャープな高回転パワーなど、実用エンジンとしてまさに「完璧」と評価したい優れたドライバビリティを備えている。
しかし、実際に乗ってみてさらに感心するのはディーゼル仕様の方だ。「本当にディーゼル?」と耳を疑うほどの静粛性、これ以上ないほどリニアなトルク特性、ディーゼルとしてはピカイチの高回転域の伸び。
どこを取っても、いま手に入る最高のディーゼルエンジンと、自信を持って断言できる。
現状、まだ日本ではOM656型が搭載されるのはS400dのみだから、一般論としてコスパがいいとは言いかねるが、このエンジンの魅力だけでS400dの1138万円は「安い!」と感じられる。
ガソリンのM256型を搭載するS450の1170万円、E450の1070万円と比べても、だんぜんOM656型の魅力が光っている。
■国産車はZ30ソアラがコスパ最強だ!!
【歴代最強コスパ直6 第4位:トヨタ Z30 ソアラ】
ここまで輸入車ばかりだったので、あと一台の魅力的でコスパのいい直6は国産から選びたいところだが、残念ながらいま新車で手に入る国産直6は存在しない。
絶版車までワクを広げると、R32〜R34スカイライン>-R、A80スープラあたりが定番となるが、いまやこれら絶版名車は価格が高騰してしまい、決してコスパがいいとは言えなくなっているのが悩ましい。
そんな中で、タマ数は少ないものの、あればそこそこの価格で手に入るのがZ30系ソアラだ。

1JZ-GTE型2.5Lツインターボと2JZ-GE型3L搭載モデルが存在し、シャシー性能はほぼ80スープラと同等。
生産終了から20年以上経っているから、まともに走らせるにはそれなりに手を入れる必要があるが、それでも80スープラよりは割安に直6の走りが味わえる。
新型A90スープラでBMW製とはいえ直6が復活するが、コスパよく国産直6を楽しむなら、まだしばらくは絶版モデルから探し出す方がお手軽なんじゃないでしょうか?

【おすすめ直6搭載車はこれだ!!】
・E46 M3(程度の良い中古車) コスパ★★★☆☆ 今から買える度★★☆☆☆
・BMW M2コンペティション コスパ★★☆☆☆ 今から買える度★★★☆☆
・メルセデスS400d コスパ ★★☆☆☆ 今から買える度★★★☆☆
・メルセデスE450 コスパ ★☆☆☆☆ 今から買える度★★★☆☆
・Z30ソアラ(中古車) コスパ ★★☆☆☆ 今から買える度★☆☆☆☆
■国産直6にもっといいクルマあるでしょ!!
(TEXT:ベストカーWeb編集部)
たしかにM3がいいのも、M2がいいのも、ベンツがいいのもわかる!! でも日本にもそこそこコスパの高い直6もあります!!
日本の直6といえばやはり2.6LツインターボのRB26DETTを搭載する、スカイラインGT-Rが挙げられるだろう。超がつくほどの名車だが、現実問題コスパはよくない。

なんせ最終形態ともいうべくR34は新車の頃よりも高いし、R32についても30年前のクルマと考えれば破格のプライスタグがついている。
そう考えると乗りやすいのはR34の25GTではないだろうか? ドリフト車としての需要も非常に多い車種で個体も減りつつあるが、セダンも選べる希少なGTだ。

セダンといえばマークIIも忘れちゃいけない。こちらもドリフトのベースとして大人気だったこともあり個体数は減少中。
JZX110のツアラーVがねらい目だが、これから状態のいい個体を見つけるのは厳しいか? 価格はそこそこ高値維持。

最後は超絶渋すぎるチョイスとして初代デボネアとかいかがだろうか? 2Lの6G34を搭載する三菱のサルーンだが、1960年代から1980年代まで生産されたシーラカンスのようなクルマだ。
コスパ以前の問題でなかなか直6車を見つけるのも困難だが、オーナーになって「デボネアの直6はいいですよ」ってひと言はプライスレスだろう。