エンジンを冷やすために使う水は、水道水でもいい? それともダメなのか、と思ったドライバーもいるのではないだろうか(え? いないかも?)。そこで今回は冷却水についてやさしく解説! そもそもなぜ専用液「クーラント」が必要なのだろうか?
文/高根英幸
アイキャッチ写真/nikkytok-stock.adobe.com
写真/Adobe Stock、TOYOTA
■真水ではダメ?? エンジンを冷やすために使うべきものとは?
昔のVWやポルシェだけでなく、ホンダやスバル、トヨタにも空冷、すなわち空気でエンジンを冷やす方式のクルマは存在した。
けれどもクルマが高性能、高効率化を追求していくことで空冷は廃れ、水冷方式ばかりになったのだ。
水冷と言うのは文字通り冷却水でエンジンを冷やすものだが、最終的には冷却水はラジエターによって空気と熱交換される。
「ならば空冷でいいじゃないか」とホンダの創業者本田宗一郎氏は空冷にこだわったという逸話も残されている。
しかし、水冷はエンジンの温度を安定させる能力が圧倒的に高く、オーバーヒートを防止するだけでなく燃焼室周りの温度を一定に保つために、とても都合がいいシステムなのだ。
水は熱エネルギーを蓄える能力に優れていて、熱を安定的に利用するには水冷は絶好のシステムなのである。
それなら普通に水を冷却水として利用すればいいじゃないか、と思う人もいるだろう。水なら安いし、継ぎ足すのも楽だ。
実際、競技用のマシンの冷却水には真水が使われていることも多かった。頻繁にエンジンを分解整備するようなクルマでは真水の方が都合が良かったこともあったからだ。
しかし真水は、つまり水道水はエンジンに対していい影響ばかりを与えてくれる訳じゃないのだ。
■水道水では冷却系の金属を腐食させて、目詰まりの原因に!
水は熱以外にも色々なものを取り込める能力が高い。だから洗浄には水が多用される。
洗剤を使うと汚れは落ちる効果は高まるけど、最後は水で洗い流すのも水には洗浄効果があるからだ。
水道水をエンジンの冷却系に利用するのは短期間、適した条件下であれば大丈夫だが、長期的には色々と問題が生じるのだ。
長期的に水を使用すると、まず冷却系内部の金属が腐食してしまう。これは水の洗浄効果に加え、水道水に含まれる塩素が影響している。
だから件の競技用マシンでは、走行が終わったら冷却水を抜いてしまっていた。保管時には水が入っていない状況にして、水路内部の腐食を防いだのだ。
そんなことはナンバー付きのクルマではちょっと無理だ。そこでクーラントという専用の冷却水が開発されたのである。クーラントには防錆効果があり、長期間水路の腐食を防いでくれる。
水路が腐食すると、ラジエターのチューブが目詰まりを起こしてしまうようになる。
アルミや真鍮でできているラジエターは腐食に強いが、それでも完全に錆びない訳ではなく、表面を薄い酸化膜で覆うことで腐食が進行するのを防ぐ性質がある。
そうした酸化膜や鉄部品などを腐食させて水が取り込むと、水路の一部にそうした汚れが堆積してしまう。狭いラジエターチューブの周囲は特に堆積しやすく、目詰まりを起こしてしまうのだ。
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