■世界的に人気の高いトヨタ車ベースのタクシーだが 課題もある
東南アジア以外でも、例えば北米ニューヨークでは、カムリやRAV4などトヨタのHEV(ハイブリッド車)が多いし、シカゴではカムリ、ロサンゼルスではプリウスなど、主要都市ではトヨタ車のタクシーが目立っている。
欧州でも主要都市ではプリウスのタクシー(おもにプリウスα)が目立っているので、世界的に見てもタクシー車両においてトヨタは強みを見せているようである。それだけ“壊れにくい”など、車両への信頼性が高いという事なのかもしれない。
ただし、いま東南アジア各国ではタクシー車両のBEV(バッテリー電気自動車)化を推し進めている。台湾の台北市ではコロナ禍前からBEV路線バスの導入が始まっていたが、コロナ禍前は中国・比亜迪(BYD)製のバス車両だったのが、今回訪れると台湾系ブランドに切り替わりながら増え続けている。
コロナ禍となってから訪れたインドネシアの首都ジャカルタでもBYD製BEV路線バスが当たり前のように走っていた。
そしてタイの首都バンコクでは昨年後半からタイメーカー製BEV路線バスを急速に導入しており、2023年内にはエアコン付きバスはほぼすべてBEVになるともいわれている。公共輸送機関からBEV化するのは諸外国ではお約束の話。
路線バスである程度BEV化の筋道が見えてくれば、「次はタクシー」となるのは自然の話。すでにジャカルタやバンコクではBYD製のBEVタクシーが走り出している。
バンコクでは上海汽車系のMGがステーションワゴンタイプのBEVをライドシェアサービス大手と組み、ドライバーに好条件で購入して使ってもらうようにもしており、複数の中国系メーカーがタクシー車両のBEV化を見据えすでに動き出している。
タイではMGやBYDのほか、すでにGWM(長城汽車)やNETAといったチャイナブランド車が販売されているが、先ほど長安汽車もタイ市場への参入を発表している。中国国内メインとなるが、すでにBEVタクシーの営業運行実績も豊富というのは中国メーカー最大の強みといっていいだろう。
クラウン コンフォート系の後を継ぐ形で“コンフォート ハイブリッドタクシー(JPNタクシー)”が導入されている香港だが、香港の隣は中国の深圳市。つまりBYDのお膝元となっているので、香港でもBYD製のBEVタクシーに切り替わるのは時間の問題ではないかともいわれている。
いまはアジアでは“タクシーと言えばトヨタ車”というイメージが強い地域が多い。ただ内燃機関車でトヨタにタクシー車両で挑んだものの、思うような結果を出せなかった韓国ヒョンデ自動車グループも、すでに韓国国内ではPBV(特定多目的車)としてフリートニーズ向けBEVをラインナップ、
起亜ブランドの“ニロ・プラス”などが韓国の首都ソウル市内ではタクシーとして活躍しているので、今後アジア各国がBEVタクシー導入に本腰を入れてくれば、再び本格市場参入を狙ってきそうである。
トヨタも手をこまねいているわけでもないようで、日本での現行シエンタベースで少なくとも東南アジア市場ではBEVをラインナップし、同時に東南アジアでの次期シエンタベースでタクシー車両を展開するのではないかとの話も聞いたことがある。
BEVタクシーは導入コストでは内燃機関車より高くなるが、燃料費(化石燃料から電気になる)やメンテナンスコスト(オイル交換がいらないなど)など維持費負担も軽くなるのが魅力的。
そのスタイルだけでなく、アジアの人たちが次世代タクシー車両にどういうイメージを持っているのかを探る意味でも今回のバンコクモーターショーにJPNタクシーを展示したのかもしれない。
【画像ギャラリー】こんなの見たことない!? 東南アジアを走るトヨタ車ベースのタクシー(9枚)画像ギャラリー
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