近年は、多くの新型車に大型のインフォテイメントモニター(ナビゲーションディスプレイ)が採用されるようになった。しかもそのサイズは、9インチ、10.5インチ、12.3インチ、15インチ、もしくはそれ以上と、年々拡大しつつある。
大きな画面になったことによって、使いやすいと感じることがあるのは事実だが、はたしてデメリットはないのか!?? クルマのインフォテイメントモニターの大画面化によるメリットとデメリットを考えてみよう。
文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_VAKSMANV
写真:TESLA、Mercedes-BENZ、NISSAN
大画面化によるメリットは多い
大画面のインフォテイメントモニターといって、真っ先に思い浮かぶのは、やはりテスラ車だろう。フラグシップのモデルSやSUVのモデルXには、大迫力の17インチサイズのタッチスクリーンがレイアウトされており、あらゆる設定をタッチパネルで行うことができる。ナビゲーションやバックカメラの表示といった一般的な表示のほか、エアコンやオーディオの設定や航続可能距離や平均電費、オートパイロットの調整などもこのタッチパネルで行うし、画面を上下に二分割にして上をナビに、下をオーディオ操作表示やブラウザ表示にすることも可能。まさに、ネットに繋がれたタブレットを操作しているのと同じだ。
メルセデスでも、EQS、EQE、新型Eクラスに、運転席前メーターとセンターディスプレイ、助手席側ディスプレイを繋げて3枚を1枚に見せる「MBUXハイパースクリーン」を採用しているし、トヨタ、日産、ホンダといった国産自動車メーカーや、主たる海外自動車メーカーも、横長大画面のタッチディスプレイを採用するなど、クルマの画面の拡大は世界的な流れとなっている。
画面が大きくなれば、多くの情報を同時に表示できるし(地図とラジオなどの情報を同時に見ることができる)、表示面積が増えるので見やすくもなる(スマホと同じく大きな画面のほうがインターネットや動画を見やすくなる)。また、ダッシュボード全体のデザインを先進的かつ華やかにすることもできるなど、画面の拡大はメリットが多い。
一方で、操作性が悪化し、使いづらくなることも
ただやはり、デメリットもある。人間は頭の向きを固定した場合、視線は、左右方向には動かしやすいが、上下方向には動かしにくい。下方の表示を見るには、首を下げる動作が必要となるため、運転中に見ようとすれば前方不注視となってしまい、事故の原因となってしまう。昨今のクルマのメーターディスプレイがすべて横長になっているのはそのためだが、横方向に関しても、確認ができたとしても、運転中には手が届きづらいケースもある。
また、そもそも運転中のタッチパネルの操作は難しい。スマホは手で持つので、揺れる車内でも操作できるが、クルマのタッチスクリーンはそうはいかない。クルマによっては、走行中によく使うエアコンの設定なども、タッチパネルのなかに組み込まれてしまっているものもあるが、たとえば、運転中に暑さ寒さを感じて温度調節したくなったり、外気の嫌な臭いがしたので内気循環にしたいなどの場合、揺れる車内で正確にタッチすることは難しい。
エアコンの操作のほか、音量コントロールスイッチ、ハザードスイッチ、クルーズコントロールスイッチ、また、昨今増えてきたドライブモード切替スイッチは、物理スイッチを残して欲しいスイッチだ。これらがクリック感のないタッチパネルとなると、押せたか否かが気になり、不便極まりない。昨今は、ボイスコントロールやジェスチャーで操作できるクルマもあるが、声やジェスチャーで操作するということに対して、ストレスを感じる人もいると思う。慣れの問題なのかもしれないが、おじさん世代としては、やはり走行中に使う可能性のあるスイッチは、物理スイッチで残してほしいと思う。
逆に、タッチパネルにしてしまってもよいのでは、と思うスイッチとしては、ESC/VDC/VSCオフスイッチやステアリングヒータースイッチ、オートパーキングスイッチ、360度カメラなどだ。どれも原則、停止時に操作をする用途のスイッチであり、いまのように、物理スイッチで残しておく必要はない。
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