行先表示器や車体などに「循環」と書かれている路線バスをたまに見かける。循環の要素が加わると、普通の路線バスに対して性質が大きく変わるのだろうか。
文・写真:中山修一
■循環バスの特徴をかいつまんで見ると……
「循環バス」とは、どんなバス路線を指すのか。まず法律面からアプローチしてみると、循環バスに法的な定義はない。要はバス事業者が循環だと言いさえすれば、どんな運行形態でも循環バスになり得るわけだ。
とはいえ、例えば1日1往復しかないのに循環と称するような、運行形態にちょっと無理を感じる路線、というのもあまり無い気がする。全般的な傾向から見ると、始点と終点が同じ停留所になるのが、循環バスが通常のバス路線と異なる最も大きな要素と言える。
始点の停留所を出発して各所を回り、最後に始点の停留所まで戻ってくる。さらに、始点に戻った後も車庫などに引き上げず、そのまま再び出発して同じ経路を辿って戻り、それを3回、4回と繰り返していく。
1日同じところを何度もグルグルと走り続けるマグロのような運行スタイルが、循環バスの性質によく当てはまる。
■どんなメリットがあるのか
生活路線でも観光地の移動手段としても、全国で循環バスが活用されている。生活路線では、使用車両をワゴン車くらいのサイズに設定して、普通の路線バスが通れない狭い道まで入っていき、そういった場所に在住している人々の足代わりとする例が見られる。
さらに、上記のような狭い場所を巡回して利用者をピックアップしつつ、主要の一般路線バスに乗り継げるバス停まで向かう、シャトル便の役割を担う場合もある。
また、オフィス街や工場、倉庫街、大学など、通勤通学やビジネス利用が盛んな場所においても、人の流れを停滞させないよう循環バスで運行することがある。
それほど広くない範囲に観光スポットが点在している街では、やはり観光向けの循環バスが高確率で運行している。
訪問した観光地の土地勘を持っておらず、行先がよく分からないまま来たバスに乗ってしまっても、循環なら元いた場所まで自動的に戻ってこられるため、通常のバス路線に比べ安心感が高い。
また、ずっと乗り通しでバスの中から市内観光ができるのをはじめ、途中下車しながら観光スポットを見学しつつ、来た道を戻らず順方向に進んで街の中を見て回れるのも循環バスが持つメリットだ。