ダイハツに日野自動車……事大主義の蔓延が不正の始まり!? トヨタグループで不祥事が相次ぐワケと改善への道

■トヨタグループで相次ぐ不祥事

2023年5月、トヨタの完全子会社であるダイハツの不祥事についてタイのバンコクで記者会見し謝罪するトヨタ自動車の豊田章男会長
2023年5月、トヨタの完全子会社であるダイハツの不祥事についてタイのバンコクで記者会見し謝罪するトヨタ自動車の豊田章男会長

 トヨタグループの不祥事が止まらない。トラック大手の日野自動車、トヨタ自動車の源流となる企業であり、フォークリフトやディーゼルエンジンなどを手がける豊田自動織機で排出ガスの規制適合で不正を行っていたことが発覚。トヨタ系列の販売会社でも車検不正が相次いで浮き彫りになった。

 そして大型連休に突入する直前の4月末には、トヨタの完全子会社で軽自動車やアジア向け小型車を主力事業とするダイハツ工業が衝突安全審査を違法にパスしていたことが、内部告発により明るみに出た。

 トヨタでは4月1日付けで社長の座をエンジニア出身の懐刀、佐藤恒治氏に譲り、自らは会長に就任した豊田章男氏が、連休明け早々、不正の対象車の主な生産・販売の拠点であるタイのバンコクで記者会見を行い、「不正はトヨタグループ全体の問題。自分が先頭に立って信頼回復に努める」と強調。

 重要な収益源である東南アジアでのイメージダウンにつながりかねないだけに、自らのネームバリューを生かして事態の鎮静化を図る構えを見せた。

 豊田氏は、14年前の社長就任直後に、米国で大規模リコール問題を起こして危機に直面したが、その時、米国の公聴会では「問題から逃げも隠れもしない」と誓って、率先して信頼の回復に全力を尽くした。今回の“謝罪会見”もそうした教訓から素早く対応したものと思われる。

 そのタイでの会見でも豊田会長主導で早期の信頼回復を図る姿勢を示したが、その戦術は、グループ全体にトヨタのやり方をとことん浸透させるという狙いがあるようだ。

日野自動車の小木曽社長
日野自動車の小木曽社長

 2022年3月、不正問題では“先輩格”の日野の小木曽聡社長は、大規模な排出ガス不正が発覚した緊急会見の席で、「トヨタには不正をしようとしてもできない仕組みがある」と述べて、これまで不正行為が取り沙汰されずにきた“水も漏らさぬチェック体制”とも類推されるトヨタ方式の導入を示唆する発言を行っている。

 小木曽氏はトヨタでハイブリッド車「アクア」などの開発責任者を務めたエンジニアで、日野に送り込まれてからもトヨタとの連携強化を打ち出しているが、再発防止に向けてのトヨタ流の導入は、小木曽氏の発案ではなく、“古巣”の意向とみるのが妥当であろう。

■トヨタグループに蔓延する事大主義

就任早々、不祥事対応を経験することになった佐藤恒治新社長。今後の舵取りに注目だ
就任早々、不祥事対応を経験することになった佐藤恒治新社長。今後の舵取りに注目だ

 だが、トヨタ本体のやり方を関連企業にも行き渡らせるという戦術で、グループの緩んだタガを締め直すことはできるのだろうか。

 結論から先に述べると、会長主導でトヨタ流を徹底的に守らせれば、品質管理や法令順守などに関わる問題がすべて解決できるというような単純なものではない。傘下の企業で発覚した相次ぐ不祥事は、想像もつかないほどの根深いものがあるようにも見受けられるからだ。

 トヨタの研究開発部門の要職を務めたあるOBは「一連の問題に関する情報をよく分析すると、どの不祥事もトヨタの言うことを聞かなかった結果起こったのではなく、語弊を恐れずに言えば、むしろトヨタの言うことを聞いたから起こったのだ」と指摘する。

 つまり、グループ企業にとってはトヨタからの要求に応えることが最優先事項で、社内では、そのためには「何でもあり」という機運が生じていたのだという。

 コロナ禍の前のことだが、愛知県下にある中堅の自動車部品メーカーの経営者に聞くと「設計変更の依頼にしても、突然、夕方になって連絡を受けて、納品は明日の朝までという急な要求もあり、そのつど現場では大慌てで夜勤のためのシフトの組み替えをやらなければならない」と、ため息まじりに話した。

 さらに、日野とダイハツは、歴代社長を含めてトヨタから送り込まれた人材が経営の中枢を担う。ダイハツの不正行為を発表した記者会見で、トヨタ出身の奥平総一郎社長も「(衝突試験の)担当の人間に、かなりのプレッシャーがかかっていた可能性がある」との見方を示したことも聞き逃せない発言である。

 トヨタグループ、およびその傘下の部品メーカーは、従来から結束力の強さを身上としていた。が、その結束のベースにあったのは、お先棒をかつぐような忖度の類いではなく、何かが起こったらお互いにいつ袂を分かってもいいというほどの緊張関係だった。

 ところが、近年はそうした緊張関係が薄らいでいるようにも感じる。メディアを巻き込んで作り上げた世間の評判とのズレもかなり大きいようで、現在のトヨタグループに蔓延する事大主義(強者に追随して自己保身を図ること)への懸念を抱く関係者も少なくない。

 グループ全体で再発防止に向けての改革に取り組むトヨタ本体でも、内部では微妙な混乱が起こり始めている。鳴り物入りで発売した電気自動車「bZ4X」だが直後に品質問題が露見、その解決に数カ月も要したのは、その典型的な例と言えるだろう。

次ページは : ■トヨタへのご意見番が存在しなくなった?

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

かつてのABCトリオの一角、スズキカプチーノが復活する! これから5年のうちに登場するスポーツカー情報も満載【ベストカー6月26日号】

かつてのABCトリオの一角、スズキカプチーノが復活する! これから5年のうちに登場するスポーツカー情報も満載【ベストカー6月26日号】

Rebirthスズキカプチーノ! 「注目新車三人が斬る」の人気企画だけでなく、今号は「あぶない刑事」のスペシャルインタビュー、そしてポスターも付属! ベストカー6月26日号