■もうひとつの柱「水素」の可能性は
国内ではスーパー耐久シリーズへの参戦マシンで今年から、液体水素を使用。さらに、先のル・マン24時間では主催者のACO(仏西部自動車クラブ)が公表した水素燃料車の参加承諾を受けるかたちで、トヨタが将来の参戦を見越した「GR H2 Racing Concept」を世界初公開したばかりだ。
そうした表向きの活動を支える、トヨタの最新水素技術が今回、明らかになった。「水素カンパニー」を設立するそうで、また、水素燃料車ではレクサス「LX」水素車に試乗したが、低回転域ではまだトルクが細い印象があるものの、中回転以降の吹け上がり感がとてもよいことが確認できた。
さらに驚いたのは、「マルチ水素タンク」だ。気体水素のタンクといえば、円筒型が常識化している。その場合、水素タンクの搭載位置が車体後部や後席下などに限定されてしまうことが課題だ。
マルチ水素タンクでは、例えばBEV用バッテリーの形に近い「平型」や、四駆の内燃機関車向けにプロペラシャフトを跨いで搭載する「鞍型」の試作品が初公開された。
これにより乗用車のBEVやハイブリッド車と、FCEVや水素燃料車との車体の共通化も可能となる。
そのうえで、2030年の燃料電池市場の見通しとしてグローバルで年間5兆円という業界予測を示している。このうちトヨタへのオファーは年間10万台を見込むという。内訳としては小型商用車が約5割、大型トラックが約3割と想定する。
■「極超音速技術」がクルマに!?
展示品の中に、風洞実験で使う飛行機の模型があった。「ついにトヨタも航空産業に本格参入か?」と思ったが、実はこれ、極超音速技術を使って「薄い空気の膜」を作ることでクルマの吸気抵抗を大きく下げるための実験機器だった。
三菱重工との宇宙技術に係わる共同研究の一環だという。展示品では、飛行機の主翼の3カ所に特殊な表面加工を施していた。開発担当者は「手で触って形状が違うと判断できる」というが、その部分は企業機密として非公開で、具体的な形状を確認することはできなかった。
また、主翼など一部ではなく主翼全体の表面を加工することも当然考慮されてるという。
航空業界では欧米での規定によって今後、SAF(持続可能な航空燃料)の使用が必須となりそうだ。あわせて、燃費改善も大きな課題であるため、機体の空気抵抗の低減に向けた技術開発が進んでいるところだ。
そこにトヨタは着眼し、次世代車技術と航空機技術の協業を強化させる。
■クルマのための「アリーンOS」
車載OS(オペレーティング・システム)「アリーン」についても紹介があった。
そもそもアリーンは、トヨタ・デンソー・アイシンが共同出資して設立したトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)で議論が深まったもの。
一般的にOSといえば、スマートフォンやパーソナルコンピュータでは、アンドロイドOS、iOS、Windowsなどがあるが、車載OSについてはアンドロイドOSがこれまでシェアを拡大してきた。
そうしたなかで独フォルクスワーゲングループやトヨタなど大手自動車メーカーは車載OSに関して、IT大手と連携するも自ら普及に向け主導権を得るべく新しい発想を模索してきたという経緯がある。
今回、アリーンにはさまざまな側面があることが改めてわかった。具体的には、ソフトウエアにおけるツールであり、また開発に対してはグローバル向けにわかりやすい形態のSDK(ソフトウエア・デベロップメント・キット)を公開。
さらにはユーザーが直接クルマのIT技術に触れるUI(ユーザー・インターフェイス)という位置付けでもあるのだ。
今回のデモとしては次世代音声認識を英語で紹介したが、開発担当者は「日本語での対応も英語と遜色ないレベル」と説明する。
アリーンは2025年量産予定の次期グローバルBEVを皮切りにトヨタやレクサスで標準装備化される。
コメント
コメントの使い方他社のEVは絶対許せないし地球上から消えて欲しいけど、トヨタのはどんどん増えて欲しい