クルマの情報源が雑誌や書籍などの印刷物に限定されていた時代、欧米の自動車雑誌や文化の影響を強く受けた執筆陣が繰り出す見慣れぬカタカナ用語は、たちまちクルマ好きの間で共通語となっていった。今回は、昭和世代のおじさんが若かりし頃、心揺さぶられた!? と思われるクルマ用語を思い起こしてみたい。
文/藤井順一、写真/BMW Japan、CarsWp.com、写真AC、イラストAC
【画像ギャラリー】おやじ世代なら知っているクルマ用語だが使いすぎは禁物(8枚)画像ギャラリー■自動車評論で使われがちな常套句
新型車にいち早く試乗し、プロの目線でそのレビューを届けてくれる自動車評論家の方々。
数値上のデータからは感じ取れないエモーショナルな部分まで伝えてくれる一方、そこには独特な言い回しが散見される。
そうした表現に散々触れてきたクルマ好きなら問題ないが、免許を取ったばかりの世代にとっては、なかなかに難解だ。ここでは、知っているようで知らない難解な用語をまとめてみた。
●猫足/羊の皮を被った狼
クルマの足回りがしなやかで、路面に凹凸があっても乗り心地が良い様を表現した常套句「猫足」。
ストロークが長く、粘りのあるサスペンションが「ネコが高所から飛び降りても姿勢を安定させ、足で衝撃を吸収し、素早い身のこなしをみせること」に由来する言葉だ。
元々は英国の「ジャガー」の乗り味を表現したものとされ、ブランドの象徴が「リーピングキャット」であったことから猫になぞらえた表現が用いられた。
さらに同じネコ科の動物をモチーフとするフランスの「プジョー」の乗り味に対しても使われるようになった。
その後、ハイドロマチックに代表される乗心地を売りにしていた「シトロエン」や「ルノー」など、石畳の上でもソフトな乗心地をもたらすフランス車全般の乗り味を評する言葉としても浸透していったが、本来は前述した2社の乗り味に適用すべき言葉かもしれない。
この表現を初めて用いたのが自動車評論家の故三本和彦氏といわれ、日本発の表現であったことに驚く。
氏は後に聖書の一文「a wolf in a lamb’s skin」を語源とするともいわれる「羊の皮を被った狼」を見た目に反して高性能なクルマを評する言葉として使用するなど、後の自動車評論に多大な影響を与えた人物だ。
●リニアなレスポンス
英語で「直線の」「線状」といった意味の「Linear(リニア)」。野球でいえば「ライナー」だが、それが日本でも定着、ステアリングやアクセルなどの操作に対して、クルマの反応がダイレクトな応答性(レスポンス)の良さを評した表現だ。
端的にいうと、クルマがドライバーの思った通りに動き、意のままに操れることをいう。ハンドリングでいえば「オンザレール」なども同種の意味を持つ表現といえる。
また、英語で「agility(アジリティ)」は敏捷性、俊敏性を示し、「stability(スタビリティ)」は安定性の意味で、前者はステアリングを切った際に即座に反応してくれる挙動を示し、後者はクルマの姿勢が横滑りなど不安定になりにくい安定感を評するのに用いられる。
●ピッチング/ローリング/ヨーイング
すべてクルマの姿勢変化、挙動を評す時に用いられる専門用語で、加減速の際にクルマの前後が浮いたり沈んだりする動きを「ピッチング」、コーナリング中、曲がりたい方向と反対側に遠心力で車体が傾く動きを「ローリング」、車体をフカンして見て左右どちらかに旋回する際の挙動が「ヨーイング」。
いずれも乗心地や操縦性、走行安定性などとの間でトレードオフの関係がある。
クルマの特性に合わせた最適なチューニングが求められる一方、近年では電子制御による姿勢制御が進化し極端な挙動を示すクルマは少なくなっている。
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