自動車業界100年に1度の変革が進むなか、日産の「これから」に不安を感じさせる事態が発生。世界が最速のスピードで進んでいるのに大丈夫なのか? カルロス・ゴーン元会長の逮捕以降ゴタゴタが続く日産の現状とこれからについて深堀していく。
※本稿は2023年7月のものです
文/佃 義夫、写真/ベストカー編集部、日産自動車
初出:『ベストカー』2023年8月26日号
■ゴーン逮捕以降ゴタゴタが続く日産
最近、某経済誌が「やれるか日産─解けた呪縛、反攻へ」というテーマで日産の特集を展開した。これは「やっちゃえ日産」のテレビCMをもじったタイトルだが、本当に日産はこれから「やれるのか」?
かつて日本自動車産業の躍進を支えたリーダーは、トヨタとともに日産だった。野球界の王・長嶋の「O・N」に対する「T・N」と称されたが、むしろトヨタより東京・銀座に本社を置いていた日産が先行して自動車業界の代表の座にあった時期もあるのだ。
その日産が仏ルノーと資本提携してから20余年、ルノーが親、日産が子の長年の「親子」資本関係が対等になる。内田誠社長体制も3年を経過し、真の正念場を迎えることになる。
1990年代末に存亡の危機にあった日産に、仏ルノーから送り込まれた“救世主”カルロス・ゴーンが2018年11月に突然の逮捕、その後逃亡という前代未聞の事件を起こし、その後任社長も引責辞任となり、日産の経営の混乱に追い討ちをかけた。
そんななか内田社長兼CEOが誕生したのが2019年12月1日付け。内田氏は商社(日商岩井・現双日)出身で当時専務執行役員・東風汽車有限公司取締役総裁として中国マネジメント・コミッティ議長として中国・武漢に駐在していた。まさに、社長候補としてはダークホース的存在だったのだ。
内田社長を支える形で、日産傘下(2019年に日産が34%出資)となった三菱自工COO(最高執行責任者)に赴任したばかりだったルノー出身のアシュワニ・グプタ氏をCOOとして戻し、さらに日産プロパー(生え抜き)の関潤氏を副COOとする「トロイカ体制」で“日産復活”に向けて背水の陣を敷いたのだ。
しかし、この日産トロイカ体制は、1カ月足らずで脆くも崩れてしまう。関潤副COOが12月25日付で辞任・日産退社で電撃的に日本電産(現ニデック)入りし、永守後継の次期社長候補として転出してしまった。
関氏はその後、日本電産社長に就任したが、2023年2月に台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業のEV事業最高戦略責任者に就任している。
このため、ゴーンが去って5年が経とうとするなかで、内田社長はグプタCOOと「二人三脚」で“止血”に追われた。
具体的には、ゴーン最後期の拡大路線のツケで、世界700万台規模の生産能力に広げた“門構え”に対し、販売は500万台割れとなってしまう。必然的に日産の業績は、2019年度、2020年度と2期連続の赤字転落となった。
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