大胆な変化は評価するけど……高級車としての「おもてなし」が足りない!? トヨタ クラウンクロスオーバー&BMW X4 M超辛口試乗!!

■トヨタクラウンの走り

ドライビング開始。クラウンのよく動くリアサスに「これはよくできた足回りです」と水野さん
ドライビング開始。クラウンのよく動くリアサスに「これはよくできた足回りです」と水野さん

 ではいつものように、歩くほどの速度でステアリングを大きく左右に切ります。操舵に対する反応の遅れはなく、左右差もありません。車体剛性は高く、パネルの合わせやリンク類に遊びはありません。

 動き出した印象は、カムリ……というよりもレクサスESですね。ESはタイヤのチョイスも含めて、少しスポーティな味付けでしたが、クラウンはそこまでスポーティではありません。

 タイヤは21インチですが、ハイトのある偏平率でタイヤ自体の撓みも生かしたソフトな乗り味。この21インチタイヤはミシュランのeプライマシーですが、ECO性能を重視した、ショルダーが柔らかいタイヤです。

 ルームミラーを見ると、リアウィンドウに大きな歪みがあります。これはガラスメーカーの製造問題ですが、トヨタも品質確認をきちんとやって、この歪みはなくしてほしい。特にクラウンのような高級車であれば絶対にダメです。

 メーターの文字ですが、先ほども指摘したように書体や色遣い、輝度のメリハリがないため、走り出すとなおさら必要な視認性が低下します。走行中は速度の確認が主なのですから、速度表示にパッと目が行くような表示が欲しいのです。

 路面のペイント部のような微小な段差を連続して通過していくような場面での振動吸収はいいですね。ボディの共振もないし、いやな突き上げもありません。特に車体フロント、エアボックスからAピラー部の取り付け剛性がしっかりとしています。

 若干コツコツコツとした入力はありますが、これは車体やサスの動きに遊びがないためです。しっかりとサスが動いて入ってくる入力なので、けっして不快な突き上げではなく、ソリッドな動きとして違和感はありません。ショックアブは微小入力の動き出し、0.03~0.05m/sec.の動きがスムーズです。

 速度を上げて、わざとこじるような急激な操舵をしてみます。下り坂のコーナリングでもノーズダイブによる前のめりな姿勢の変化は出ません。

 ブレーキを強めに踏みながら、ハンドルを切り込んでも、前のめりになりません。しっかりと内側後輪が接地しています。両後輪がしっかりと接地しているので、リアサスがよく動いていなしてくれるのです。これはよくできた足回りです。

 ただし、操舵に対して若干ですが車体の反応が遅れます。これはタイヤのショルダーが柔らかく撓むためです。内圧を0.1kg/平方cm程度上げると、シュッとシャープな操舵応答になります。乗り心地にはほとんど影響しません。

 アッパーボディの剛性がしっかりしているので、前後のサスペンションが綺麗に動きます。

 ただし、相変わらずリアフロアからのプルプル微振動は発生しています。GA-Kプラットフォームに共通した振動です。

 フロントフロア後端のサイドシルからサブフレームにつながる部分は、何枚もの鋼板パネルを組み合わせた構造で、スポット溶接も重ね打ちになっていて、補強部材などを加えにくい箇所なので、どうしても弱さが出てしまっています。この振動を抑えられると、もっと上質な乗り味になります。

 ロードノイズはきれいに抑えています。車体剛性の高さもありますが、タイヤの撓みが路面入力を上手に吸収しています。

 トヨタハイブリッド車で毎回指摘している、室内に入り込んでくる吸気音ですが、これはずいぶんと抑えられています。

 とはいえ、クラウンということを考えると、さらに抑えてほしいところ。直接的で不快な騒音ではありませんが、より綺麗に聞こえる音色にチューニングすれば、4気筒っぽさも感じさせません。インマニ部で発生する吸気の乱流音です。

 各気筒の吸気する量を計測して、吸入空気量のバラツキを修正してやれば、レスポンスと出力は向上し、この吸気音も小さく上質になります。

 ブレーキは後輪の接地を活かして効きもいいし、ノーズダイブも小さく姿勢が安定しています。これはいいブレーキです。

■BMW X4の走り

クラウンとは対照的に、フロントを自由に動かし、リアをガッチリ固めて動きを抑え込むことでバランスをとっているBMW X4。直6ターボの吸気音と吹け上がりが心地よい
クラウンとは対照的に、フロントを自由に動かし、リアをガッチリ固めて動きを抑え込むことでバランスをとっているBMW X4。直6ターボの吸気音と吹け上がりが心地よい

 X4のステアリングは縫い目が緻密で指が痛くなるようなことはありません。

 さて走り出します。Mモデルなので、走り出しからガッチリ感を感じますが、硬くてゴツゴツするということはありません。

 歩くほどの速度で大きく操舵をしますが、反応はリニアで左右の動きに差異はありません。車体やサスペンションに遊びはありません。

 速度を上げていきます。クラウンとは対照的に、比較的フロントを自由に動かしてリアをガッチリ固めて動きを抑え込むことでバランスさせています。リアショックアブの伸び側減衰を利かせています。

 そのため、路面のペイントなどの微小入力を連続して通過すると、リアサスが伸び切る前に次の入力があるため、いわゆるボトミング(底突き)ショックが発生しています。ただし、このリアの踏ん張りがハンドリングのキモで、高いスタビリティを発揮しているのです。

 タイヤの横剛性は大きいですね。タイヤの横剛性にサスペンションブッシュが負けてしまっています。

 もっとカッチリしたブッシュを使いたいところなのでしょうが、そうすると今度は操舵に対する反応がシャープになりすぎてしまい、さすがに市販車としては機敏すぎてしまう。あえてブッシュで逃がしてやる、BMWなりのバランスのとり方ですね。

 エンジンは流石BMWの直6ターボですね。吸気音も心地よく、よどみなく吹け上がります。インマニ内で吸気がきれいに流れる気流音です。

 アクセルに対するエンジンのトルクレスポンスがいいので、アクセルワークで走行ラインのコントロールを自在にできる。これがBMWの魅力です。車体の大きさや、2トンを超える車重を感じさせません。クルマが小さく感じます。

 ブレーキは、温度が上がっていないと利きが鈍い。これはブレーキパッドの温度依存性が強く、ある程度温度が上がってくるとグググと利く、安心感のあるブレーキです。Mモデルで車重も重いクルマなので、ブレーキはこのくらい余裕が必要です。

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