大胆な変化は評価するけど……高級車としての「おもてなし」が足りない!? トヨタ クラウンクロスオーバー&BMW X4 M超辛口試乗!!

■価格を考えると物足りない仕上がりのクラウン

最低地上高を145mmと高めたことで前後席ともにヒップポイントは高まったが、ホイールハウスが乗降時に邪魔をしてしまい、スムーズではない
最低地上高を145mmと高めたことで前後席ともにヒップポイントは高まったが、ホイールハウスが乗降時に邪魔をしてしまい、スムーズではない

 インテリアを見ると、600万円クラスとは思えない簡素感。ドアの内張はペラペラの樹脂製。少し厚手のソフトパッド付きのトリムは当然だと思います。廉価な大衆車ではないのですから。それはインパネも同様です。

 カーナビモニター画面は横長の大型で、液晶表示のメーターパネルと一体で見せる造形ですが、それにしてはメーターパネルの表示面が一段奥になっていて視点移動が生じます。また、液晶画面の解像度が粗く、特にメーターの細かい文字が判読しにくいレベルです。

 ステアリングは握りが太くて悪くはないのですが、工夫がない。今の時代、ACCやレーンキープアシストの性能がよくなって、高速道路のロングドライブでは、ドライバーはステアリングを「握る」というより、スポーク部に手を添えるような姿勢で運転しています。

 クラウンのステアリングは、この部分の形状がよくない。親指をスポーク部に引っかけて添えるような持ち方をした時に粗く飛び出している縫い目に当たって指が痛い。縫製の工程削減による原低効果が、市場品質より優先された結果に見えます。

 乗降性は悪くありません。とはいえ、地上高を高めたことでシート座面、ヒップポイントは3cm高まっていますが、乗降性が格段によくなったということは感じません。

 ドラポジ自体は普通のセダン的で、特にアイポイントが高いという印象はありません。アクセルペダルはオルガン式で、斜めに配置されているため、ブレーキを深く踏んだ際に靴の外側で引っかけて共踏みしてしまう恐れを感じます。シート形状は標準的で可も不可もなく、です。

 後席は……決して乗降性がいいとは思えません。タイヤハウスがドア開口部に大きく張り出しているため、スッと乗り込むことができず、お尻を前に出すような姿勢で乗り込まなくてはなりません。そのため身体を室内に入れた後、お尻を落とすような2段階のアクションで座るようになります。

 後席の座面は前後長がちょっと短く、座ると腿の裏が浮いてしまいます。高級車の後席としては3cm短く、大衆車のサイズです。また、靴先が前席下に入らないため、足を投げ出した姿勢も取りにくい。

■自然なシートポジションのX4

X4の後席は、ドアの足元開口部が狭く、足の通過性に難がある。ベースとなった3シリーズセダンでも指摘した弱点だ
X4の後席は、ドアの足元開口部が狭く、足の通過性に難がある。ベースとなった3シリーズセダンでも指摘した弱点だ

 続いてX4に乗り込みます。室内に入ると、よくも悪くも紛れもなくBMWです。

 ドライビングポジションはFRプラットフォームの位置関係で、ステアリングの位置は自然です。ペダルも自然に足を伸ばした場所にアクセル、ブレーキそれぞれのペダルがあって、変なオフセットはありません。

 液晶表示のメーターパネルはクラウンと比べて、画面の解像度が高く、クリアに見えます。また、文字の見せ方も上手です。重要な数字は、鮮明で大きな書体が使われ、ドライバーは一瞬で視認できます。このあたりはノウハウの差です。

 後席は、X4もやはりタイヤハウスの張り出しが大きく、乗降性がいいとは言えません。また、ドア開口部の下部もシルが高く、また狭い。これはベースとなっている3シリーズセダンと同じです。

 X4のエンジンルームを見ます。基本的には3シリーズ系統のプラットフォームです。

 あらためてストラットアッパーとフロントホイールセンター(アクスル)の位置関係を見てください。アクスルに対してストラットアッパーは大きく後退しています。20cm程度は後退しています。

 私がいつも言っているハイキャスターのジオメトリーです。7~8度は付けています。クラウンは、日本車で一般的な5~6度程度です。

 車体の構造は毎度おなじみの3シリーズです。

 ストラットアッパーはダッシュパネルと離れていますが、フロントクロスメンバーとストラットアッパーを結合するブレースバーが渡されるなど、剛性アップの補強はしっかりと構成されています。これはオフセット衝突時にフロントサスが倒れてしまうことを防ぐ効果もあります。

次ページは : ■トヨタクラウンの走り

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