■スズキ小型車の最量販車種はソリオ
スズキの小型車で販売台数が最も多い車種はソリオだ。2023年は1カ月平均で約4400台を販売した。ホンダフィットやトヨタライズに相当する売れゆきだ。
ソリオは軽自動車のスペーシアを拡大したようなコンパクトカーで、背の高いボディによる広い車内と、乗降性の優れたスライドドアを装着する。しかもボディが軽い。
ライバル車のトヨタルーミーは、2WDの車両重量が1100kg前後だが、ソリオはマイルドハイブリッド搭載車でも1000kgだ。エンジンの排気量は、ルーミーは直列3気筒1Lだが、ソリオは直列4気筒1.2Lを搭載する。
つまり、ソリオは軽くてエンジン排気量にも余裕があるため、動力性能はルーミーを大きく上回る。マイルドハイブリッドのWLTCモード燃費も19.6km/Lで、ルーミーの18.4km/Lよりも優れている。
ルーミーはトヨタ車とあって、売れゆきはソリオの2倍近くに達するが、商品力はむしろ逆だ。スズキのクルマ作りの根底にあるのは軽量化で、動力性能、走行安定性、燃費性能など、さまざまな機能をバランスよく向上させている。
今はメカニズムのハイテク化で燃費を向上させられるが、ボディは重くなり、走行安定性や乗り心地にもよくない影響を与えることが多い。コストと価格も高めてしまう。しかし、軽量化であれば燃費の向上に伴う弊害が生まれにくい。
長年にわたって軽自動車を手がけてきたスズキは、軽量化のメリットと達成する方法を熟知しており、優れた商品力の基礎になっている。
■スイフト&スイフトスポーツもいまだに販売は堅調
スズキの小型車ではスイフトも注目される。現行型の登場は2016年だから、今では7年近くを経過するが、1カ月に2300台前後は販売されている。しかもその半数近くをスイフトスポーツが占めるのだ。
スイフトはベーシックなコンパクトカーで、ソリオと同じくボディが軽い。直列4気筒1.2Lエンジンを搭載して、車両重量は900kg前後だ。運転感覚には軽快感が伴う。
スイフトスポーツも車両重量は1000kg以下で、エンジンは直列4気筒1.4Lターボだ。動力性能は2.3L前後のノーマルエンジンに匹敵するから、加速性能も優れている。
足回りにはモンローのパーツを使い、内外装もカッコよくアレンジして、価格は6速MTが202万8400円に収まる。軽くて走りの素性も優れたボディに、動力性能を適度に高めたターボエンジン、上質な足回り、魅力的な内外装を加えて価格は割安だ。
その結果、スイフトスポーツの売れゆきは1カ月平均が約1100台で、トヨタのGR86を上回る。スポーツモデルでは好調な売れゆきとなった。
■軽量さを生かしたバランスに優れるスズキの商品開発
以上のようにスズキは小型車市場において、空間効率の優れたソリオと低燃費で使いやすいスイフト、その素性を生かした走りの楽しいスイフトスポーツを割安な価格でそろえている。
この軽さを生かしたバランスのいい商品開発は、軽自動車を含めてスズキのさまざまな車種に見受けられる。それを可能にしたのは、2輪車から始まって4輪車市場に参入し、フロンテ、アルト、ワゴンRなどを着実に手がけたスズキの足跡によるところが大きい。背伸びをせず、誰でも便利に使える経済的で買い得なコンパクトカーや軽自動車を提供してきた。
同様のことが販売面にも当てはまり、規模の大きなディーラーを出店できない地域では、修理工場や中古車販売店に併設された業販店がスズキ車を販売している。販売面のコストも抑えられ、価格の安さに結び付いている。
日本の自動車産業を振り返ると、第二次世界大戦直後には2輪車と軽自動車のメーカーが乱立した。それが時間の経過とともに淘汰されるが、スズキは独自性を保ちながら、小さなクルマを中心とする世界的なメーカーへ成長している。
過去10年ほどの営業利益率も、スズキは6~8%で推移しており、トヨタの7~8%に次いで高い。ホンダの4~5%、日産の4%前後を上回る。多くのユーザーに愛用される小さくて買い得なクルマを堅実に販売するスズキの姿勢は、商品力を向上させ、安定した経営と商品の供給体制により、日本のカーライフに欠かせない存在となっている。
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