トヨタの“死角”はどこにある?国内敵なし?それとも??

トヨタの“死角”はどこにある?国内敵なし?それとも??

 2018年、世界販売台数では3位ながら、僅差にて2015年以来の首位位奪還を窺い、国内販売ではぶっちぎりの1位。日本の自動車メーカー、そして製造業の巨人・トヨタ。

 だが巨人といえども「弱点」や「課題」はあるはず。遅れているカテゴリーは? 他メーカーにあってトヨタにないものは? それらはいわばトヨタの“死角”と呼べるはずだ。今回はトヨタのそんな“死角”を検証してみた。

 今年3月に大きく取り上げられた、スズキとの提携の展望についても掲載。

■2018年間 自動車メーカー世界販売台数
1. フォルクスワーゲン 1083万台(1%)
2. ルノー日産三菱 1076万台(2%)
3. トヨタ 1059万台(2%)
4. GM 838万台(▲13%)
5. ヒュンダイ 740万台(2%)
6. フォード 598万台w(▲10%)
7. ホンダ 524万台(1%)
8. FCA 484万台(2%)
9. PSA 388万台(7%)
10. ダイムラー 335万台(2%)
※( )内は前年比増減率。▲はマイナス

■2018年間 自動車メーカー国内販売台数
1. トヨタ 156万4309台
2. ホンダ 74万7177台
3. スズキ 71万4599台
4. ダイハツ 64万6874台
5. 日産 61万5966台
6. マツダ 22万734台
7. スバル 14万8453台
8. 三菱 10万4590台

※本稿は2019年4月のものです
文:国沢光宏、ベストカー編集部/写真:Adobe Stock、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年5月10日号


■これらの改善が今後の肝になる!? トヨタの「アキレス腱」

(TEXT/国沢光宏)

 クルマ作りの戦略として、トヨタが盤石でないと思える部分は少なくない。いわば“トヨタのアキレス腱”について、自動車ジャーナリスト 国沢光宏氏に語ってもらった。

*   *   *

●フラッグシップスポーツ レクサス「LC」の希薄な存在感

 本来ならレクサス「LC」などはレクサスのブランドイメージを引っ張るくらいのパンチ持つ、贅沢なクルマである。新型スープラも腰が抜けるほどスタイリッシュなスポーツカーだったらよかった。

存在感が薄い!? レクサスLC

 興味深いことにスープラの場合、開発主査・多田哲哉さんをはじめとした開発陣の熱い思いが素晴らしいアピール力になっているうえ、モリゾウさんも強力にプッシュしているため、販売的には大成功を収めている。

 けれど多田さんもモリゾウさんの援助もないLCについちゃ完全に忘れ去られた存在となってしまってます。個人的にはレクサスで最も魅力的なクルマだと評価しますが……。

 レクサスの“戦略的な甘さ”はどこからきているんだろうか?

●突き詰められない「レクサスLS」の性能

 現行レクサスLSの評価は世界規模で厳しい。初代LS(日本名セルシオ)のようなダントツ性能を持っていないためだと思う。というか私のような評論家ですら現行LSのハンドル握った瞬間、古くさいと感じたほど。

世界的に評価が厳しい。渾身のフラッグシップ、レクサスLS

 むしろ同じ価格帯に属すベンツSクラスやテスラモデルSにユーザーを奪われてしまっている。

 加えてVIPカーとして使おうとしたら、いくらなんでもリアシートが狭すぎる。成功したLSは初代と3代目。4代目と現行5代目は連続して厳しい評価になってしまった。

 マイナーチェンジで改良できるレベルじゃないような気がします。レクサス部門は厳しい評価を真摯に受け止めるべきだ。

●小排気量ターボなどが魅力的でない

 伝統的にトヨタはエンジンの魅力をアピールしてこなかった。というか、名機と評価されるエンジン、見当たらないです。なかでも小排気量エンジンについちゃ、1に実用性、2に燃費、3に耐久性、4がコストといった具合。

華のない1.2L直噴ターボ

 現在販売している1200cc直噴ターボだってまったく華やかさがない。期待できるのは現在GRが開発しているといわれる、3気筒1600ccターボ。250馬力以上を目標にしているといわれるから、迫力あるエンジンになると予想しておく。なんだか私も買っちゃいそうな気がしますね。

 また、RAV4に搭載される2L、NAエンジンも官能的ですね。

●ウリのハイブリッドシステム「THS-II」の旧態化

 現在トヨタの主役となっているハイブリッド「THS-II」は、実用化からすでに16年も経過しており(アクア用などは2代目プリウスと同じ)、しかもその時点から基本的なコンセプトを変えていない。いや、進化していない、と表現すべきかもしれません。

進化していないといっていい、16年目の「THS-II」

 ただコストダウンは大幅に進み、初期の4分の1程度になったといわれるほど。

 その「THS-2」、ここにきてさすがに古さが目立ってきた。なかでも厳しいのが絶対的な動力性能。プリウス級の価格のクルマなら180km/hで巡航できる程度のパフォーマンスは必要になってくる。もはや充分に燃費いいから、楽しさを追求すべきなんだと思う。

●「中国市場に弱い」? 今やこれは過去の話

 トヨタは中国市場が弱い、という意見もあるけれど、そら2017年までだ。“アキレス腱となる危惧”は、これには当てはまらない。

弱さは過去のもの。中国市場

 昨年中盤から着実に販売台数を伸ばし始めてきた。なぜか? 中国にハイブリッドをはじめとした先端技術の導入など決めたからにほかならない。

 この決断、中国政府は高く評価しており、直近の対応を見ていると準国内メーカーの如し。この流れに乗るように評価が上がっている。

 今後新型RAV4など成功確実と予想されるような車種も出てくると、一段といい流れになっていく。もちろん中国市場の全体需要落ちればトヨタだって落ちるだろうけれど、販売シェアは確保していけると予想しておく。

次ページは : ■他メーカーにあってトヨタにないものとは?

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