シエンタのデザインは秀逸! スペース効率ならフリード!! コンパクトミニバン2台を辛口評価

■クルマを美しく見せるのは「人の技」

 フリードは2列シートのフィットをそのまま、スペース効率のよい3列シートのミニバンに仕上げたクルマです。だからこそ、安定した販売台数を維持し続けているのでしょう。「間違いのない」安心感があります。

 細部を見ていくと、シエンタ、作り込みがちょっと雑なところが見えます。エンジンフードとフェンダーパネル、さらにヘッドライトのチリ合わせ。見た目にも隙間が不均一ですし、指で撫でると段差が明確です。

 CAD画面では均一な隙間で、パネル間の段差も目立ちません。しかし、実際の製造ではフードパネルの先端角部にはプレス加工用のRが付き、フェンダーとの合わせ部分に裏側まで見える大きな段差ができてしまうのです。

 それを見越して補正代を付けた設計図面を描くのがプロの仕事、ノウハウです。そこにコストは不要で、人の技がこのような品質感をグンと高めるのです。この様な処理はベンツが上手い!

 フリードはフードとフェンダーのパネル合わせ部に樹脂パーツを合わせて、敢えてラインを斜めに見せることでチリ合わせの誤差を目立たなくしています。これも上手いやり方です。

■空力とデザインを両立させる

シエンタのリアコンビランプはデザイン性だけではなく、空力性能にも考慮した造形となっている
シエンタのリアコンビランプはデザイン性だけではなく、空力性能にも考慮した造形となっている

 シエンタではドアミラーと側窓の隙間を整流するためにフィンが切ってあります。空力を考えたのでしょうが、まだ甘い。

 この手法だと、ドアミラーと側窓に挟まれた狭い空間部分に流速の速い大量の風を吹き抜けさせるので、側窓のガラスとドアサッシュの段差部分や、ドアと車体の隙間部分に、室内の空気を吸い出す負圧が発生します。

 霧吹きの、細く絞って風速を上げた部分で水を吸い上げる原理と同じです。

 よほど側窓のシーリングをしっかりとしないと、走行時の、ピーという吸出し音や空気抵抗を増やす渦を発生させます。

 R35GT-Rでは、この部分に敢えて高さ1cm×長さ10cm程の突起をつけて、事前に予備の渦を発生させて、直撃する流速を落としました。これがサッシュレスガラスでも300km/h走行で、ビュー音がなく空気抵抗も減少させたノウハウです。

 シエンタの車体後方はちょっと面白いデザインです。後端部のコンビランプはRを付けた形状にしたかったのでしょう。しかし、ここにRをつけると、車体後方に風が巻き込み大きな渦ができて空気抵抗が増えてしまう。

 そこでテールランプの赤いカバー部の形状を盛り上げ、さらに整流フィンもつけてやる。これによって車体側面を流れてきた風の巻き込みを減らして後方に流す工夫をしています。この効果は期待できます。

■ベース車の完成度の高さを感じさせる

 シエンタの車体構造はヤリス系だということがエンジンルームを見てもわかります。ヤリスのエンジンルームにかさ上げの部材を追加して、車高が高いシエンタのフードやフェンダーに合わせています。直列3気筒1.5Lエンジンのハイブリッドもヤリス系列共通。

 ただし、数センチかさ上げされた部分で、エンジンルームを遮蔽するゴムシールが途切れていて、これではエンジンルームの騒音や熱気がエアコン吹き出し口から室内に入ってきます。

 ですが、これは頭がいいですね。ラジエターコア上部に沿うように樹脂製の補強パーツが入っているのですが、よくよく見ると、これが中空構造となっていて、吸気管を兼ねています。

 吸気口を吸気ダクトよりも、少し低い位置にすることで、冠水路で水が掛かってもダクトに上げないようにしています。

 しかも、これだけ長い吸気ダクトにして、途中にレゾネーターも置いているので、吸気音を効果的に消すことができるので、エアクリーナーも小型化しています。

 フリードのエンジンルームを見ると、基本的には先代型フィットの車体構造だということがわかります。オーソドックスで問題はありません。

 パワーユニットは1.5L直4エンジンにモーターを組み合わせた7速DCT。発売当初は不具合を出して、ずいぶんと苦労したようですが、今回のDCTのセットはよくできています。

 さて室内を見ましょう。フロントドアを開けると……シエンタはフルドアを使っていますね。スッキリしていいです。

 ドアトリムはシートと同じ明るいベージュのクロスを使ってアクセントにしています。同じクロスをインパネ上部にも使っていますね。

 カップホルダーや小物入れがたくさんあります。このあたり、ファミリーカーとしての使い勝手が配慮されています。

 パーキングブレーキは足踏み式ですね。最近はコンパクトカーでもEPBを使うクルマが多いですが、やはりコストです。足踏みだと1500円前後ですがEPBでは3500円以上します。

 シートは悪くないです。フィット感がよくて疲れません。クッションがソフトで、体重が軽い女性が座ってもしっくりとフィットします。

 ステアリングはチルトだけでなくテレスコもあるので、小柄な女性でも適正なドラポジをとれます。着座位置に対するペダル配置も適正で、変にオフセットすることもなく、踏み間違いを防ぎます。

次ページは : ■3列目を重視するか非常用とするか?

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