アルピーヌA110Rのハンドリング評価が爆高!! でも、ハンドリング性能のいいクルマって、いったいどんなクルマなのだろう? ハンドリングの良さに定評のあるクルマたちを、『操縦王』山野哲也が徹底評価する!!
※本稿は2023年10月のものです
文/山野哲也、ベストカー編集部、写真/奥隅圭之
初出:『ベストカー』2023年11月26日号
■ハンドリングがいいってどういうこと?
自動車の評価をする時、しばしば「ハンドリング」という評価項目が取り上げられるけど、では「ハンドリングがいい」とはいったいどのような状態を指すのだろうか?
「ドライバーが意のままに、まさに自分の手足を動かすような感覚で動かすことができるクルマ」
山野哲也選手はハンドリングをこのように表現する。
ここ最近のベストカー本誌企画で「ハンドリングのいいクルマ」を挙げてもらうと、多くの評論家諸氏が迷わずアルピーヌA110Rをナンバーワンに挙げる。
A110Rの「よさ」は、まさに意のままに扱える操縦性のよさにあるというのがその理由だ。
もっとも、A110Rはボンネットやルーフはもちろんのこと、ホイールまでカーボン製としたスペシャルなモデル。リアウィンドウまでカーボン製フードに交換されるという徹底ぶりで、やや特殊な存在だ。
そこで今回はベースとなるアルピーヌA110Sをハンドリング王の基準車として、国産ハンドリング自慢の5モデルを山野哲也選手の厳しい目で評価していくこととした。
■A110以外もハンドリングに優れたクルマはあり
こんにちは、山野哲也です。確かに、A110Rは徹底して「操縦性」を高めるためのノウハウ、技術を詰め込んだクルマです。バネ下重量を小さくするためにカーボン製ホイールを履くほどの徹底ぶり。
とはいえ、それもA110シリーズの素性のよさがあればこそ、こうしたスペシャルなチューニングが生かせるということを忘れてはなりません。
「ハンドリングがいい」とはどのようなことを言うのか?
単にハンドルを切ってスパッとクルマが反応するということではありません。ステアリングの操作だけではなく、アクセルワーク、ブレーキ操作なども併せて、ドライバーが動かしたいようにクルマが反応し、意のままに操ることができるクルマが「ハンドリングのいいクルマ」ということになります。
アルピーヌA110シリーズはエンジンをドライバーの後方、リアアクスルより前方に搭載したミドシップです。
A110Sの前後重量配分は43.2対56.8で前軸重が軽いため、操舵に対するノーズの動きが軽快。これを活かすために、サスペンションがストロークしてもタイヤの接地面が変化しないサスペンションジオメトリーを採用しています。
高性能タイヤを履いていても、サスストロークによって接地面が変化してしまっては、タイヤの持つポテンシャルを活かしきることはできません。
そうした意味では日本が世界に誇るマツダロードスターはエンジンをフロントに搭載するものの、前軸よりも後方に搭載して前後重力配分を50対50に近づけています。
サスペンションも複雑なリンク構造を使い、接地面変化を抑えたジオメトリー。スポーツカーにしてはソフトでよく動く足ですが、これがポイントで、しっかりとロールさせながら前後左右のタイヤに荷重を載せて、ヒラリヒラリとタイトなコーナーを駆け抜ける。
大きくロールをしてサスペンションがストロークしてもタイヤの接地面が一定なので、グリップが唐突に抜けてしまうことがなく、安心して走らせることができるのです。これもまた「ハンドリングがいい」クルマです。
アクセル操作やブレーキに対する反応もハンドリングに大きく関連します。アクセルワークで前後荷重をコントロールしますし、ブレーキも車速を落とすだけではなく、前後荷重のコントロールに重要な要素なのです。
微妙なアクセル操作に対しリニアにエンジンが反応してくれれば荷重移動でクルマの姿勢コントロールの幅が広がります。これはエンジン性能だけではなく、ペダルの操作性やタッチなども大切です。
ロードスターのエンジンは1.5Lでけっして大パワーではありませんが、アクセル操作に対するトルクレスポンスがいいので、「アクセルワークが効く」ため操縦性がいいのです。
シートもハンドリング性能に大きな影響を与えます。コーナリングGが大きくなるとドライバーの身体は前後左右に振られます。バケットシートで身体自体がホールドされても、シート本体の剛性が低いと、Gがかかった際に歪んでしまい、姿勢がずれてしまいます。
ミリ単位でも肩の位置がずれればステアリング操作に誤差が出ますし、ブレーキペダルに体重をかけた際にシートが歪めばペダル操作に遅れが出ます。これらの要素が絡み合って、トータルとして「ハンドリングがいい」という評価につながるのです。ロードスターはこのあたりもしっかりと仕上げています。
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