■それぞれの個性を活かした操縦性
スバルBRZは水平対向エンジンが大きなポイント。エンジン全高が低いため、車両全体の重心が低く、フロントのロールセンターも低く、コーナリング時のロールが少ない。タイヤの接地変化も小さいため、操縦性が安定しています。
一般的な直列エンジンではヘッドが高い位置にあるため、アクセルのオンオフでエンジンが揺れるのを前方で感じるのですが、BRZではそれがなく、操舵に対する反応がいい。エンジンが2.4Lになってトルクレスポンスがよくなったこともトータルでのハンドリング性能を引き上げています。
シビックタイプRは今回のクルマで唯一のFF。2Lターボで42.8kgmの大トルクをフロント2輪で受け止めるのですから、フロントサスのジオメトリーと剛性が徹底的に引き上げられています。
シビックタイプRはギアシフトがスムーズなのが特筆点。サーキットで大きなGがかかった場面でも止まっている時と同じ感覚でシフト操作ができるのは信頼感に繋がります。ドライバーの身体が前後左右に揺さぶられる状況でも安心して操作できるのは、操縦性能に大きくかかわります。
ZとスカイラインはV6ツインターボを搭載することもあり、フロント軸重は重くなりますが、搭載位置をなるべく後方にしているため、意外とフロントの重さは感じません。
スカイラインのエンジンは最大トルク56.1kgmまで引き上げられていますが、全開にしても暴力的な加速という感じではなく、スムーズにパワーが盛り上がっていくフィーリングでドライバビリティに優れます。スポーティサルーンのスカイラインとしては、バランスのいいエンジンです。
このパワー、トルクを受け止めるシャシー性能は高いです。コーナリングでやや急激なGを入れても滑らかな反応で、安定性が高く安心して山道を走ることができるスポーツサルーンのハンドリングです。
フェアレディZはスパッというシャープな動きではなく、ジワリと車体が反応する、穏やかな動きをエンジントルクなどとトータルで作り上げています。高速道路でのロングドライブでも安心感の高いハンドリングです。
今日乗った5台は、ハンドリングにそれぞれ個性があって面白いですね。
■山野哲也が選ぶハンドリング王はどれだ!?
さて、ここまでアルピーヌ A110Sを「ハンドリングのいいクルマ」の基準車としながら、では「ハンドリングがいい」とはどのようなクルマなのか? を国産車5車を乗り比べながら確認してきました。
やはり「素性」はとても大切なポイントとなることは間違いありません。
・エンジン搭載位置などを含めた前後重量配分
・重心を低く抑える車体設計
・タイヤの接地変化を最小に抑えるサスペンションジオメトリー
・タイヤからの入力をしっかりと受け止める車体剛性
・正確な操作を行えるドライビングポジション
・アクセルやブレーキペダルの操作性
これらが「素性」です。スポーティな走りを目指して専用開発されたクルマは、当然素性のよさを感じます。そうした意味では、マツダロードスターは傑出した存在と言えます。
歴代ロードスターは常に人馬一体、意のままの操縦性を目指して開発されてきましたが、現在のND型ではエンジンを1.5Lのダウンサイズしてまで、軽快な操縦性を追求しました。
そのために軽量化を徹底し、またサスペンションジオメトリーを最適化しています。アルピーヌA110系の動きも絶賛しますが、ロードスターの「意のまま感」は見事です。
以前の取材時に試したGRカローラやGRヤリスもモータースポーツで戦うクルマとしては高いパフォーマンスを感じましたが、ベースはカローラスポーツやヤリスで、ロードスターやA110のような「素性」ではありません。
素性のよさという意味ではGRスープラRZ。直6エンジンを搭載しながらも前後重量配分を50対50に近づけ、フロントサスはストラットながら接地変化を最小に抑えた、操縦性のよさを発揮します。
BRZは本編でも言いましたが、水平対向エンジンによるフロント重心の低さが素性のよさに繋がり、ロールを抑えた軽快なノーズの動きが心地よく、操縦性のよさを楽しめます。
1位:マツダ ロードスター……100点
2位ホンダ シビックタイプR……90点
3位:スバル BRZ……85点
3位:トヨタ GRスープラ……85点
5位:トヨタ GRカローラ……80点
6位:スズキ スイフトスポーツ……70点
6位:日産 フェアレディZ……70点
6位:日産 スカイラインNISMO……70点
※採点はロードスターを100点とした場合の各車の得点
コメント
コメントの使い方運転手の技術と速度域にも強く左右されますからね。求めるレベルによって全然評価は変わりますし
低速で楽しめる作り方は大抵高速域で破綻しますが、そもそもそこまで出せないから試せないとかも