アメリカでAPEC首脳会議が行われたが、ベストカー的に注目したいのが、習主席が乗ってきたクルマ。わざわざ中国から運んだ車両なのだが、なんとバイデン大統領までが「美しい」とほめたたえたほどなのだ。一体どんなクルマなのか調べてみた!
文/ベストカーWeb編集部、写真/紅旗、Wikipedia(@Creative Commons)
■ロールスのデザイナーをヘッドハンティング!
近年、中国車といえばBYDや吉利が話題だが、要人向け車両となると紅旗の独壇場だ。紅旗とは1958年に創立された第一汽車(創業を指導したのは毛沢東!)の高級車ブランドだが、長く中国公人が乗るクルマを手がけてきた。
そんな紅旗は、2018年にロールス・ロイスでファントムなどを手がけたチーフデザイナー、ジャイルズ・テーラー氏を引き抜き、紅旗の設計責任者(第一汽車副社長も兼務)に抜擢するなど新たな体制作りも進めている。2021年には大阪に日本初のショールームを出店したことを記憶している読者もいるだろう。
紅旗のラインナップだが、現在は「L」「H」「Q」という3つのシリーズに大別できる。Hはパーソナルユースの高級車、Qはライドシェアなどを見据えた業務用途といった位置づけだが、なんといっても紅旗の顔といえば、公用車部門を担う「L」シリーズだ。
Lシリーズは、1958年に誕生した紅旗の第1号車「CA72」を源流とするシリーズだが、現在はその地位をL5という大型セダンが担っている。L5のデビューは2014年で、CAシリーズの伝統とも縦スリットグリルや丸型ヘッドランプを継承したクラシカルなモデルだ。
■顔つきが古めかしいL5とは違う!
今回、サンフランシスコで開かれたAPEC首脳会議に持ち込まれたのは、このL5をベースとした特別車両「N701」だという。
N701の詳細は公開されていないのだが、海外メディアの報道によれば、全長は約5.4m、車重3.1トンで6LのV型12気筒エンジンを搭載するといわれている。
防弾・防爆仕様の装甲装備車両としては軽すぎるので、この数値はオリジナルの L5のものかもしれないが(※米大統領専用車のビーストは約8トン)、ともかく中国が威信をかけて作ったクルマであることは確かだ。
N701がL5ともっとも異なっているのはフロントマスク。50年前を思わせるようなL5の古典的な顔は大きくアレンジされ、前段でパーソナルユースと書いたHシリーズのフラッグシップ「H9」に近い顔付きが採用されているのだ。この辺りはロールスのファントムを手がけたテーラー氏が存分に腕を揮ったものと推察する。
11月15日に行われた米バイデン大統領と習近平国家主席の首脳会談の後、大統領は習主席を見送ってクルマ寄せに停まってるN701に近づき、「Beautiful Vehicle!(美しいクルマだ)」とつぶやいた。
対して習主席は「中国で作った紅旗です」と紹介したのだが、バイデン大統領が室内を興味深そうにのぞき込み、「私のキャデラックみたいだ。みんなはビーストって呼んでるけれど」と話す姿は、クルマ好きの心にも触れる一瞬だった。
ひょっとしたら、中国製のEVが世界へ進出しようとしている現在を象徴するシーンとして、後に語り伝えられるかもしれない。
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