マツダ MX-30にプラグインハイブリッドモデル(MX-30 ロータリーEV)が追加された。最大のトピックはマツダが世界に誇るロータリーエンジンが発電用に搭載されたことだ。さて、MX-30 ロータリーEVの走りに関しては、別記事に任せるとして、ここでは開発者から聞いたロータリーEVの話をお届けしたい。
文:ベストカー編集部/写真:平野学
■かつてのロータリーエンジンとは何が違う?
今までロータリーエンジンと言えば654cc(ローター幅80mm×創成半径115mm)で原則エンジン自体のサイズも変更されていなかったが、今回MX-30に搭載したエンジンは排気量からして830cc(ローター幅76mm×創成半径120mm)に拡大。エミッション対策で直噴化、ハウジングも鉄製からアルミ製にすることで軽量化されている。
新ロータリーエンジン(8C)のローターは1つだが、このロータリーエンジン発電する電力で、最高出力125kW(170ps)、最大トルク260Nm(26.5kgm)の駆動用モーターを動かすことができる。理論上は、エキセントリックシャフトを延長し、ローターを増やしてエンジン出力を高めれば、もっと高出力なモーターも動かせる設計となっている。
■ロータリーEVの弱点はあるのか?
さて、実際に購入するとなると、ロータリーエンジンというものを知らない人もいるから、不安になることもあるだろう。そこはマツダも承知済みで、試乗会で聞いたところ隠すことなくネガな部分も語ってくれた。
まずロータリーエンジンは、おむすびのような形をしたローター(回転子)が、まゆ型のハウジングのなかをぐるぐる回り、ハウジングとローターとの間にできた空間で、燃料と空気を混ぜた混合気を燃焼させる。
構造上、ロータリーエンジンは、ハウジング内の潤滑のためにエンジンオイルが重要なのだが、燃料と一緒にエンジンオイルも燃焼させる仕組みとなっている。そのため、エンジンオイルが減りやすい。これは、発電用になったロータリーエンジンでも変わらず、減ってくるとチェックランプが点灯するという。
ただ、ロータリーエンジンに乗った経験のない購入者がほとんどなので、ビックリして不安になるだろうということで、購入時に定期的な補充が必要なことを説明するそうだ。
では、ロータリーエンジンの最大の懸念点とも言える、エンジンの密閉性を保つのに重要なアペックスシールの耐久性は大丈夫なのか? と、ロータリーエンジンを知るクルマ好きの読者諸兄は考えるだろう。
そこについても、マツダは対策済みだ。発電時に使用する回転域が、2300~4000rpmということもあるが、アペックスシールの厚さを2.0mmから2.5mmにアップし、耐摩耗性を大きく向上。さらにハウジング表面のメッキを変更することで、潤滑性も向上させている。
苦い思い出のある方もいるかもしれないが、低中回転しか使わないので、かつてのRX-7やRX-8のMT車のように、レブリミットに当ててアペックスシールを破損するという心配もない。
これにより、定期的なオイル交換、補充は必要だが、24万kmはオーバーホールを必要としない耐久性を実現したという! 開発者いわく、「カーボンデポジットなどの問題もありかなり苦労しましたが、自信を持って送り出しました」とのことだ。
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