■小型モーターで大型ピックアップトラックが走る!
実験車だけにスペックはほぼ非公表だが、250kW(340ps)のモーター、遊星ギア2セットを使った3段変速機、そして最終減速ギアを一体化したeAxleがその心臓部。
そのほかについては、パワーコントローラは外部設置、電池は62kWhとのことだが、これらは今後どうにでも変わる可能性がある。
その走りについては、とりあえずまだ設計概念の実証試験中という段階だけに、「おー、ふだんは2速発進で、3速へのシフトも意外にスムーズ!」という確認レベル。
チョイ乗りしただけなので、これ以上は「見た目リーフ用くらいのモーターサイズで250kWなのはパワコンで大電流ぶっ込んでるのかな?」とか、「車重は軽く見積もってリーフの倍程度はあるだろうにミッションのおかげか発進は予想以上に軽快!」とコメントするのが精一杯。
可能性は大いに感じるもののユーザー目線で評価するのは時期尚早で、もっと開発が進んでからぜひ再度取材してみたい。
今回はタイタン用だが、eAxleを小型化することでスポーツモデルのリアアクスルに装着したら楽しいEVができるかもしれない。そんな可能性を感じさせる。
■EVコンバージョンでミッションとの組み合わせが生きる
一方、ジヤトコもメディア側のこのリアクションを予想していたようで、コンバートEVの試乗車を3台用意してくれていた。
キャラバンベースで既存7AT+100kW(136ps)モーター、パラメディックベースの5AT+160kW(217ps)モーターの組み合わせの2台。そして、NV100クリッパーには40kW(54ps)モーターに5速MTを組み合わせた。
で、これら3台がそれぞれ「乗って楽しい」という意味では侮れない魅力がある。BEVに変速機というと即「非合理的なギミック」と批判する人がいるが、合理的ではない代わりに普通のBEVとひと味違う面白さがあることも確か。
ステップシフトでテンポよく加速するドライブフィールに、思わず“うおおおおおぉ~!”と声が出て、自然と笑顔になっていた。内燃機関車とも違うのだが、BEVのシームレスな加速とも違う新感覚。
コスト的には商品化は難しいと思うけど、スポーツモデルなどに搭載したら、これもまたアリだよねというのが正直な感想でございました。
■これにも注目! 5MTの軽バンEVが楽しい!
軽バンのクリッパーをEVコンバートしたモデルには3ペダルの5MTが組み合わされている。エンジンの代わりに40kW(54ps)モーターを搭載しているのだが、モーターにMTの組み合わせってどうなのか?
発進時はクラッチペダルを踏み込んで1速にギアを入れるのだが、この際、制御によって低回転でモーターが回り、疑似的にアイドリングのような状態となる。ごく普通にクラッチをミートするとモーターならではのトルクでグイッと加速。
起動トルクが大きいので3速のギア比でも余裕で発進できるし、1速飛ばしのシフトアップでもスムーズに走れる。
5速で走っていて曲がり角で速度が落ちた時も、そのままのギアでもエンジンのようにノッキングするわけでもなく、アクセルを踏めばスルルルと再加速。シフトダウンすれば強い加速が得られるが、横着運転もできてしまう。
なるほどそういうことか、と膝を打つ。モーターだったらワイドギアレシオで3速もあれば充分フレキシブルな走りができるのだな、ということが理解できたってわけですよ。
ジヤトコはこういった適合実験車をさまざまなパターンで作って、今後のEVの在り方を研究しているんだね。モーターに多段トランスミッションは不要という固定概念を払拭する体験でした。
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