排気ガスを利用し、圧縮した空気をエンジンに送り込むことで出力を高めるターボ。今から数十年前、それはパワーアップという根本的な部分だけでなく、クルマのステータスを上げるワードにもなっていた。そんなターボ時代の幕開けを少しだけひも解いてみよう。
文/木内一行、写真/トヨタ、日産、マツダ、三菱
■半世紀近く前に登場した国産車初のターボがコレ「日産セドリック/グロリア」(430型)
日本の市販車で初めてターボエンジンを搭載したのは、「430」の愛称で知られる5代目セドリック/6代目グロリアだ。
1979年6月にデビューし、風格ある水平基調のスタイリングや先進装備の数々で注目を集めたが、半年後には国産量産車初のターボエンジンが搭載されて話題となった。
当初は5MTのみの設定だったため走りのイメージが強いが、当時は燃費性能向上と排ガスのクリーン化が求められていた時代。それゆえ、パワーアップが主な目的ではなく、省燃費や騒音低減などに配慮しながら大排気量エンジンと同等の性能が得られる……という触れ込みだったのだ。
そのL20ETは、2Lながら145ps/21.0kg-mを発揮。2.8LのL28Eが145ps/23.0kg-mというスペックだったことを考えると、ターボの効果がいかに高いかがわかるはずだ。
このL20ETは、その後スカイライン(5代目C210および6代目R30)やフェアレディZ(2代目S130)などにも搭載。後継のRB系が普及するまで、日産ターボエンジンの主力として活躍した。
■マツダだから可能だったロータリー+ターボ「コスモ/ルーチェ(HB)」
ロータリーといえば、世界で唯一マツダが量産化に成功したエンジン。それゆえ、当然ながら同社が世界で初めてのロータリーターボを作り出した。搭載されたのは、1981年デビューの3代目コスモと4代目ルーチェだ。
この世代の両者は兄弟車の関係にあるものの、ボディバリエーションやデザインの違いによって差別化。ただし、レシプロとロータリーというふたつのエンジンが搭載されていたことは共通だ。
世界初のロータリーターボが登場したのは1982年。573cc×2の2ローターエンジンとなる12Aに日立製のタービンとEGIを組み合わせ、160ps/23.0kgmを発揮。ロータリーならではのスムーズさにターボの圧倒的なパワーがプラスされ、スペシャルティカーとしての魅力が一層高まったのである。
ちなみに、本命と思われるサバンナRX-7(SA22C)に12Aターボが搭載されたのは1983年9月。コスモ/ルーチェはそれより1年も早く、ロータリーターボの感動を味わえたのである。
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