かつて身近なクルマをベースにしたスペシャルティクーペは、若者たちの憧れの存在だった。第11回目となる日産ヘリテージ連載は、初代パルサーエクサの限定車として設定された「パルサーエクサコンバーチブル」を紹介しよう。
文/大音安弘、写真/池之平昌信、日産
■リトラクタブルライトが与えられたパルサーエクサ
チェリーの系譜を初代パルサークーペから受け継いだ初代パルサーエクサには驚きの特別仕様車が存在し、現在も日産ヘリテージコレクションに収蔵されている。
パルサーエクサの歴史は、パルサーが2代目にフルモデルチェンジを果たした1982年(昭和57年)4月27日に始まる。2代目パルサーは、主力となる3ドア及び5ドアハッチバックに加え、独立したトランクを備える2ドアノッチバッククーペを設定。このクーペにはパルサークーペではなく、新たにパルサーエクサの名が与えられた。
スペシャルティクーペらしい専用デザインとなるスポーティなフォルムを与えられたパルサーエクサは、スーパーカーを彷彿させるリトラクタブルヘッドライトを備えたスラントノーズが印象的だ。
このリトラクタブルヘッドライトは、世界初のワンタッチ式パッシング機構を備えたもので、1000~1500㏄クラス初かつ日産車初のリトラクタブルヘッドライトを搭載したモデルであった。
ボディパネルもベースのパルサーとはまったく異なっており、その結果、空気抵抗係数(Cd値)を0.37まで高めていた。ただし、インテリアはパルサーと共通であるため細やかな差別化に留められており、スペシャルティ感はやや薄めであった。
■直4、1.5LSOHCエンジンのみの設定
エクサは基本構造を共有するが、新パルサーシリーズのイメージリーダーの役目もあり、上位グレード向けの自然吸気仕様の1.5L直4SOHCエンジン車のみを設定。ベースグレードは、シングルキャブレター仕様とし、最高出力85ps/5600rpm、最大トルク12.3kgm/3600rpmを発揮。トランスミッションは5速MTと3速ATを用意した。
最上位となる「E」グレードでは、インジェクション式となり、最高出力95ps/6000rpm、最大トルク12.5kgm/3600rpmまで向上させ、5速MTのみの組み合わせとした。
発売当時の東京地区価格は、117万5000円(ベース、5MT車)~128万5000円(E、5MT車)であり、同エンジンを搭載するパルサーよりも10万円前後割高であった。