2020年に登場65年を迎えるトヨタクラウン。日本のセダンを支える名車だが、平成になり多くの変革を迎えた車種でもある。
なんせ現行型はかつてでは考えられなかったニュルブルクリンクでの開発もしたというから、そのキャラクターの変貌ぶりには驚きを隠せない。
時代と共に進化を続けるクラウンだが、平成元年から平成31年までの「平成クラウン」たちのなかでもっとも”クラウンらしい”1台はどれだろうか?
クラウンの歴史と共に振り返ります。
文:片岡英明/写真:トヨタ、編集部
■先端技術と「おもてなし」こそクラウンのあるべき姿
トヨタを、そして日本を代表する乗用車の名門ブランドが「クラウン」だ。登場は1955年1月で、2020年には誕生から65年の節目を迎える。
初代クラウンは、日本初の本格的なプレミアムセダンとして開発され、随所に先進的なメカニズムを採用した。以来、日本の風土に根ざしたクルマとして成長し、プレミアムセダンとして不動の地位を築いている。
今では日本の乗用車のなかで、もっとも長い歴史を誇るクルマになった。21世紀の現在まで生き残ってこられたのは、歴代のクラウンがユーザーフレンドリーの姿勢を貫き通し、多くのファンから信用と信頼を勝ち取ってきたからだ。それを端的に表しているのが「いつかはクラウン」の名コピーである。
では、クラウンらしさとは何なのだろう。それはいろいろあり、人によってクラウンらしさが違う。ひとつは先進性だ。
国際商品として通用する高品質と優れた安全性能を売りにした3代目クラウンは、時代に先駆けてコラプシブルステアリングやヘッドレストなどの安全装備を採用し、快適なパワーステアリングも用意している。
4代目クラウンは先進のEFI仕様を用意し、5代目ではいち早く4速ATをラインアップした。6代目では爽快な電動サンルーフやムーンルーフも設定している。
7代目はエンジンを新世代のDOHC4バルブを主役とし、ターボに加えDOHCスーパーチャージャーも用意した。
プログレッシブパワーステアリングや4輪ESCなど、電子デバイスも早い時期に導入している。これに続く8代目ではハイテク装備を積極的に採用。
電子制御エアサスペンションやナビ機能を持つエレクトロマルチビジョン、統合制御のECT4速ATなど、今につながる技術を盛り込んだ。一歩先を行く先進装備の採用は、クラウンが世界に誇れる美点のひとつである。
意外や、デザインにおいても保守的ではない。1968年10月、3代目クラウンにクラス初の2ドアハードトップを追加した。そして70年代になると安全性も考慮して4ドアピラードハードトップを投入。
また、機動性の高いステーションワゴンも早い時期からラインアップしている。量産プレスの限界に挑む、面の美しさとクロームの上手な使い方もオーナーの自慢できるところだろう。
快適性の高さも特筆できるところだ。最高級オーナーカーだが、後席に人を乗せる機会も多い。そこで歴代のクラウンは居心地のいい空間を生むことに執念を燃やし、広さだけでなく乗り心地や静粛性にも徹底してこだわった。
とくに平成のクラウンは、クラスを超えた静粛性を実現し、ドイツの御三家やキャデラックなどの名門に脅威を与えている。
また、ブレーキの鳴きを激減させるなど、新しい快適性の創造にも力を注いだ。いつの時代もオーナーの安全と快適性を第一に考えた「おもてなし」の心を持つ日本の高級車がトヨタのクラウンである。
コメント
コメントの使い方