■国産のセミリトラクタブルヘッドライト搭載車たち
■ホンダ バラードスポーツCR-X
それまで、スポーツカーの象徴だったリトラクタブルヘッドライトを大衆車に開放したのは間違いなくホンダだった。
「プレリュード」(2代目)、「インテグラ」(初代)といったクーペから、「アコード」(3代目)/「ビガー」(2代目)といったセダンまで、発表するクルマはすべからくリトラクタブルヘッドライト。1983年に、FFライトウェイトスポーツとしてデビューした3ドアハッチバック「ホンダCR-X(バラード)」も同様だった。
軽量コンパクトなボディに高出力なエンジンを搭載。低いボンネットに滑らかなフラッシュ・サーフェスボディなど、CD(空気抗力係数)値0.33に加えて、CD×A(前方投影面積)値0.56を実現し、空力特性に徹底的に取り組んだ結果、ヘッドライトはフラップ式のセミリトラクタブルヘッドライトを採用。
ライト自体は固定式で、点灯時にボンネット先端のフラップ部が持ち上がる構造は空気抵抗の低減と共に特別感を与えるのにも貢献した。リアをスパッと切り落としたようなクラウチング・ヒップのデザインを含め、斬新なデザインが目を惹く一台だった。
■日産・フェアレディZ(Z31型)
まるで半目だけ開いたような、眠たいようで、鋭くも見える眼差しは、1983年にデビューしたフェアレディZ(Z31型)のキャラクターにぴったりと思うのは筆者だけだろうか。
歴代モデルに通じる、ロングノーズ・ショートデッキスタイルを継承した3代目フェアレディZは、発売当初から全グレードがV6ターボエンジンを搭載。これは、ライバルである3代目「トヨタ セリカXX」を強く意識したものだったといわれる。
デザインも然りで、セリカXXがリトラクタブルヘッドライトを採用したのに対し、フェアレディZは伝統の丸型ヘッドライトから角型のヘッドライトに切り替えたうえで独自のセミリトラクタブル式を採用、目いっぱいライバルを意識していた。
これは、一般的なリトラクタブルヘッドライトに見られるライトとリットが回転する方式でなく、ヘッドランプとリッドが上下に平行移動するように開閉する「パラレルライジング式リトラクタブルヘッドライト」と呼ぶもので、空気抵抗の低減に加えて、開閉時間の短縮や停止位置誤差による光軸の安定化にも寄与。
ワイドアンドローのフォルムの実現とともに、格納式のライトながら、半分ライトが露出した構造によりパッシングが素早くできることも売りとしていたといわれる。
■いすゞ ピアッツァ
「いすゞ117クーペ」と聞いて、胸アツになるのは団塊世代以上かもしれないが、その117クーペと並んでクルマ好きに人気だったのが、1981年にデビューした「ピアッツァ」だった。
デザインは117クーペ同様、ジョルジェット・ジウジアーロが担当。大人4名が乗れるパッケージングも備えた2ドアクーペだ。
前身はいすゞが117クーペの後継モデルとして、1979年にスイス・ジュネーブで発表したプロトタイプ「アッソ・デ・フィオーリ(イタリア語でクラブのエースの意)」。
低いノーズと鋭いウェッジシェイプ、空力低減のため極力段差をなくしフラッシュサーフェス化されたオリジナルデザインを、FRジェミニをベースにほとんどそのままのスタイルで量産化したものだった。
原型となったクルマのヘッドライトは、可動式のセミカバーを取り付けた角型ヘッドランプのセミリトラクタブルヘッドライトで、これも徹底したフラッシュサーフェス処理の賜物だった。
市販車版であるピアッツァにもこの意匠はそのまま受け継がれ、極めて鋭利なフロントセクションを持つ原型そのままのデザインを実現し、CD値0.36は、当時としては最先端のものだった。
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